meshtiles *現在はサービス終了

インタビュー&構成:徳橋功
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「セレンディピティ・インタレスト・コマース」をに広めます。

 

 

今回お伝えする発のアイデアは、写真投稿・共有アプリの「meshtiles」です。「どこが素晴らしいアイデアなの?写真共有アプリなんて、たくさんあるじゃん!」と皆さんおっしゃるでしょう。しかし、今回のお話は「meshtiles」だけでは終わりません。もっと言えば、meshtilesは今回のお話の”序章”に過ぎません。

meshtiles+α+α・・・写真だけでなく、そこから派生するあらゆる可能性について、開発・運営をしているセルブリッジの伊藤太一さんに語っていただきました。

<伊藤太一さん>
慶応義塾大学商学部卒。商社やベンチャー企業を経て、株式会社ファーストリテイリング(ユニクロ)入社。ユニクロではウィメンズラインの責任者として商品製作、商品開発、マーケティング、事業オペレーションに深く携わる。
その後株式会社リヴァンプ(経営支援・事業支援)、その支援先企業の代表取締役を経て、2010年10月、株式会社セルブリッジ設立。

*伊藤さんのライフヒストリーはこちらでご覧になれます。
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Instagramのリリース前に考案

Twitterは日本でも流行っていますが、日本人と海外の人たちが140文字のコミュニケーションを楽しんでいるかと言えば、そうとは言えない状況です。何故そうなるかと言えば、Twitterが文章をベースにしているからです。そうなると、英語でコミュニケーションを取れる人は、日本だとすごく限られてきます。そこで思い浮かんだのが、写真や画像の共有です。これなら、世界中の人たちと言葉に関係なく楽しんでいただけると思いました。

meshtilesは、簡単に言えば”Instagram“と”Pinterest“の、それぞれの良いところを組み合わせたものです。Instagramは写真の加工・共有サービス、Pinterestはウェブ上にあるお気に入りの写真を自分のクリップボードにまとめていくサービスですが、meshtilesはそれらを1つにしたものと考えていただいても良いと思います。ただしここで強調させていただきたいのですが、開発当時はまだInstagramはリリースされていませんでした。この世にまだ写真投稿・共有アプリは存在しなかった時に、写真や画像の持つボーダレス性に気づき、meshtilesを考えたのです。

 

1枚の写真にユーザーの全情報

Insragramのように簡単に写真の加工ができ、その写真にタグを付けることができます。ただしInstagramとの大きな違いは、自分を表すキーワードがタグとして全て1枚の写真に自動的に埋め込まれるということです。分かりやすい例で言えば、サーフィンやポルシェが好きな人が花の写真を撮影してアップしたら、その1枚の花の写真に「サーフィン」「ポルシェ」という情報も埋め込まれる。だから花が好きな人だけでなく、その花の写真を通じて同じくサーフィンやポルシェが好きな人たちともつながれるのです。

ただし、写真にアップする際にユーザーがつけられるタグは2つまでです。Instagramを利用している時に思ったのですが、タグを際限なく写真に付ける人がいます。それによる露出範囲の拡大を狙ってのことですが、中には写真と全く関係のないタグを付ける人もおり、それに辟易しているユーザーもたくさんいます。ですので一定のルールや枠を設けた方が良いのではないかと思い、2つに絞らせていただきました。幸いなことに「すごく使いやすい」「悩まなくて済む」というふうに好意的に受け止めて下さっている方が多いです。

趣味・趣向の近い者同士が写真を介してつながり合い、そこでいろいろなコミュニケーションを取ることができる。ただ単純に写真をシェアするのではなく、新たなコミュニケーションを生み出すきっかけになるサービスを提供したいと考えています。

具体的には、ユーザー一人一人の好きなものや興味のあるものを弊社のデーターベースに蓄えていき、そのデータを元にユーザー同士をマッチングさせていくようなイメージです。同じ物を好きな人たちが偶然出会い、趣味に関する情報や感想などの交換を気軽にしていただく。そんなサービスを構築していきたいと思っています。

 

ECとの連動

meshtilesは、3段階のフェーズを設定しています。第1フェーズは、これまでご説明させていただいた、スマートフォンのアプリケーションサービスとして写真共有のSNSを構築する段階です。

そして第2フェーズはブラウザ対応、つまりご家庭やオフィスで使うPC端末でご利用いただけるようにする段階です。スマートフォンの普及はどんどん進み、パソコンの代わりになるとまで言われているほどです。ただ、PCの前に座っている時にわざわざスマホをいじるかと言われたら、まだまだPCの方が操作は楽です。ユーザー同士の交流を増やすためには、スマホ以外の選択肢としてブラウザでもご利用になれるようにするのが有効ではないかと思いました。

そして最終段階の第3フェーズでは、現時点の最終目標である「Eコマースサービスの立ち上げ&meshtilesとの連動」です。車に例えてお話すると、meshtilesがエンジンであり、弊社の事業を前に進めていくタイヤの役割を果たすのがEコマースです。

SNSとEコマースの連動は、新しくも珍しくもありません。FacebookやPinterestに専用ページを設置する企業は多いです。私たちはそれらとは違い、完全にSNSとEコマースを連動させる。まだ分かりにくいでしょうか・・・つまり、meshtilesの運営者は弊社であり、Eコマースの運営者も弊社。それにより、サービス間のユーザー完全共有化が実現するのです。meshtilesのユーザーは、同じアカウントでEコマースのユーザーにもなれます。逆もありで、Eコマースのユーザーは、同じアカウントでmeshtilesのユーザーにもなれます。

またmeshtilesで起きたアクティビティ、具体的に言えば誰かがある写真に「いいね!」や「クール!」を押した場合、それらの情報は即座にEコマースにも反映されます。

例えばEコマースに商品を出品しようと考えている人がいるとします。出品したい商品の写真をEコマースサイトに投稿すると、同時にmeshtilesにも同じ写真が自動的に投稿されます。それは商品の写真だからと言って別のカテゴリーにアップされるのではなく、通常の写真と同じように投稿されます。meshtilesを利用中のユーザーたちは、その写真が商品の画像であることを意識せずに見ます。興味を持った人がその写真の情報を見た時に、初めてその写真が、ある商品の写真であることを知ります。商品としては欲しくないと思っても、もしカワイイと思ったら「いいね!」を押す。その行為は、Eコマースにも伝わります。もしその商品に興味を持ったら、写真にあるEコマースへのリンクボタンを押し、商品の詳細を知ることができます。

 

欲しい商品も現実化する?

そしてもうひとつ。これはかつての写真SNSには無かった機能だと思いますが、meshtilesに「商品化してほしいものの写真」を投稿することができます。ある日、道を歩いていて見つけたもので「こんなものが商品化されるといいな」と思うものを写真に収め、その写真に「Want(欲しい)」というフラグを立てて投稿すると、その情報がEコマースにも自動的に飛びます。他のユーザーが投稿した写真にも「Want(こんなものが欲しい)」することができます。meshtilesにはそのような写真が数多く集まります。先に申したように、1枚の写真にはその人を表すキーワードが全て埋め込まれますから、どんな人がどんな商品を欲しがっているのかが分かります。するとEコマースへの出品を考えている人は「この人に私の商品を提案したら、興味を持ってもらえるかもしれない」と考える。つまり、Eコマースでの活動の一つの道しるべになると思うのです。

この「Want」について言えば、企業にとっても商品開発の参考になると思います。なので非常に面白いデータを弊社は集められるのではないかと思います。このようなサービスは、世界にもまだ無いと思います。

写真SNSをエンジンにし、事業全体を動かすタイヤの役目としてEコマースサービスへ発展させて、今までにない「セレンディピティ・インタレスト・コマース」という分野を確立していきたいと思います。

 

の技術者チームと共同開発

もちろん基本的な勉強はしていますが、私自身はIT出身でなく、コードも書けません。そこでアプリの開発を、ベトナムの開発チームと共同で行っています。私はmeshtilesの開発の中心、すなわちCTOとして、開発の陣頭指揮を執っています。

日本の企業、特にITの分野では海外の技術者と組むなどということはほとんど無いと思います。それは恐いからでもあるし、まして初めての商品・サービスの開発を海外で行うなどということは、どこもやらないと思います。もし仮にそのような会社があったとしても、ひょっとしたら「丸投げ」してしまうのではないでしょうか。

その点、弊社は丸投げではありません。丸投げは絶対にダメだと思っていました。これは私のユニクロでの経験からですが、海外委託する場合でも細かく自分たちの目でチェックし、改善すべき箇所が出て来たら自分たちの口からきちんと伝えなくては、優れた品質の商品は作れないことを身にしみて分かっていました。ですので、丸投げは絶対にしません。

では、その開発チームをどこで見つけるか。国内でも良かったのですが、意思の疎通が簡単にできる分、楽をしてしまうと思いました。「こんな感じでお願いします」と言えば通じてしまう。それでは私が絶対にしたくないと思っていた丸投げに近くなってしまいます。

それなら海外の方が、きちんとコミュニケーションを取って開発を進めることができる。曖昧なでは意思疎通できないから、自分の頭の中を整理して明確化する必要もでてきます。しかもmeshtilesは展開を目指しているのだから、海外の人たちの視点からアイデアをどんどん出してもらった方がいいですよね。なので海外での開発にこだわりました。しかもラボ契約(一定期間のチーム人員を決めて開発ラボを構築する契約。発注者がラボのマネジメントを行うのでノウハウの蓄積を行いやすく、かつ契約期間ごとに人員の増減が可能なので、自由度の高い開発体制の構築が可能)に応じてくれる会社を探しました。

、ベトナムで探しましたが、「丸投げでの委託」を希望する会社が多かった。一人あたりのギャランティーを決めてマンパワーを借り、マネージメントの権限を弊社に与えてくれる、いわゆる”間接雇用”のような形態を取らせてくれるところはなかなかありませんでしたが、ようやくベトナムで1社見つけ、そこと契約しました。

「丸投げ」の場合、一度の作業工程で全て完璧にサービスを作ることができれば費用は安く済むでしょうが、そんなケースはほとんどありません。完成してからやり直しを命じるくらいなら、ラボ契約のように技術者と随時コミュニケーションを取りながらサービスを作っていく方が、絶対に完成度は高いです。また、iPhone版とAndroid版とで違う人員を集めたり、チームを拡大したり縮小したりすることは、ラボ契約であれば容易にできます。

そして、ベトナムの開発チームと組むもう一つのねらい – 彼らの開発スキルの向上です。最初はユーザーインターフェースもガタガタでした。私は他のアプリを見せて「これが日本やアメリカのレベルだから、これに合わせてくれ」と言いました。彼らはmeshtilesの開発のために、今では他のアプリをすごく研究してくれています。ベトナム人は勤勉で真面目で素直。しかも国が理系に力を入れています。ハノイ工科大学には、優秀なエンジニアの卵たちがたくさんいます。そういう人たちと開発を進めていき、やがて彼らが携わったものが世界中で使われるようになれば、彼らの自信にもつながると思うのです。

 

「グローバル」は死語になる

私は「グローバル」「ボーダーレス」「クロスボーダー」という言葉は、やがて死語になっていくと思います。そのきっかけが、スマートフォンです。

スマートフォンの普及により、ITビジネスは完全に、真の意味でクロスボーダーになりました。つまり、クロスボーダーにを展開することが前提となったのです。それまではどうしても国境を意識していましたが、今では特にプロモーションしなくても海外でアプリがダウンロードされる時代です。アプリの普及により、海外で自分のサービスを知ってもらったり利用してもらう機会が格段に増えたと思います。実際にmeshtilesのダウンロードの約半分は海外ユーザーによるものです。

海外へのプロモーションは何もしていません。やったことと言えばアプリを英語・日本語・ベトナム語(エンジニアたちがしました)に対応させたことだけです。

だから私の中では、アプリは「ツール」です。パソコンの前に座っていなくても使えるツールであり、世界中の人たちに知っていただく機会を得るためのツールです。それもあり、meshtilesのアプリを開発した時点から、海外展開は大前提でした。その証拠に、写真へのタグ付けはアルファベット入力のみです。日本語でのタグ付けはできません。でも英語での文章を書く必要は全くないし、ベースは写真ですから、英語が苦手な人にとってもハードルはそれほど高くないと思います。

パッと見、Instagramの二番煎じと思われるかもしれませんが、その先に描いているビジョンが私独自のものであることは、先にも申し上げた通りです。

 

“世界規模のフリーマーケット”を目指す

弊社の社名「セルブリッジ」は、人間一人一人、事業ひとつひとつを細胞(セル)に見立て、それらを橋渡しするという思いを込めたものです。この思いがmeshtilesによって具現化できればいいなと思っています。

趣味・趣向が合う者同士が、当たり前のように国境を越えてコミュニケーションを取り、時にはモノのやり取りをしていけるような場を提供できたら、すごく楽しい世の中になると思います。

そして企業の生産活動についても、大量に作って大量に在庫を抱えるのではなく、ある商品を本当に欲しいと思っている人と、その商品の作り手がうまくマッチングして、最も効率的に商品やサービスの授受ができる場を作っていきたい。それが楽しくてワクワクするような場であれば、私はすごく嬉しいです。

既存のEコマースサイトと違い、出店するために一定の在庫を抱える必要は無く、在庫が1個や1枚でも出店できる。複数の在庫がひとつひとつ色や形が違っていても構いません。とにかくそれらを見てもらい、実際に触ってもらう機会を提供したいです。

そしてそれがきっかけとなり、たとえば日本の地方の産品や、途上国で生まれた素晴らしいものを世界中の人たちが知る機会になり、世界中がハッピーになる。これが私のmeshtiles事業でのゴールです。

 

 

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meshtiles関連リンク

meshtiles:http://meshtiles.com/top
株式会社セルブリッジ:http://cellbridge.jp/

 

My Eyes Tokyo

Interviews with international people featured on our radio show on ChuoFM 84.0 & website. Useful information for everyday life in Tokyo. 外国人にとって役立つ情報の提供&外国人とのインタビュー

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