「傷だらけの英語習得術」加藤いづみさん

インタビュー&構成:徳橋功
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Izumi Kato
英会話スクール運営者

 

人生の選択肢を増やしてくれた英語。だから私は英語を学ぼうとする人たちのサポーターでありたい。

 

2013年初頭に立て続けに掲載したインタビューシリーズ「」。英語教育者やベンチャー支援者、野球選手、難民支援ボランティアなど、英語そのものや英語の学習法を指導したり、様々な国の人たちと英語でコミュニケーションを取りながらプロジェクトを進める“英語人”たちが、どのようにして英語を身につけてきたかをお伝えしてきました。

そして約4年半ぶりにご紹介するのは、英会話スクールの運営者。東京・神奈川・埼玉・千葉で、カフェや講師宅でのマンツーマン英会話レッスンを提供している「初心者専門マンツーマン英会話ビギン」(以下「ビギン」)代表・加藤いづみさんです。

このスクールとの出会いは、私たちが隔週で実施している“訪日観光客インタビュー”の提携先を探していた時でした。英会話スクールで英語コミュニケーションを学ぶ人たちに、彼らが身につけたスキルを実践に移す場をご提供させていただきたいと思い、様々なスクールにご提案させていただきました。その中で唯一、私たちとのコラボレーションをご快諾下さったのがビギンさんでした。

スクールの名称にもあるように、ビギンさんは英語学習の初心者のみを対象にしていますが、もうひとつ特筆すべき点があります。それは“講師全員が日本人”であること。日本人“も”指導しているスクールの存在は耳にしたことはあっても、日本人“だけ”が英語を指導しているところは全く知らなかった私たち。俄然興味を持ち、加藤さんにその背景を詳しくお聞きしました。

*インタビュー@英会話ビギン株式会社(東京都港区)
*写真提供:加藤いづみさん

 

“最初の一歩”をサポート

私が運営する「ビギン」の生徒さんは、一言で言えば“英語は苦手だけど、頑張りたい”という人たちが中心。英語が全く話せないという人はもちろんのこと、 英会話が割とスムーズに出来たとしても、文法面などでサポートさせていただく余地があれば、 ご本人のニーズに合わせて指導させていただくこともあります。

日本人の英語学習者の特徴は「頭で文法などを理解してから会話をしたい」と考える人が多いこと。つまり“会話をしながら英文法などに慣れる”のとは逆で、水泳に喩えるなら、海に飛び込んでもがくうちに泳ぎ方を覚えるのではなく、泳ぎ方を覚えてから海に入る感じです。

私たちがサポートしたいのは、そのように“いきなり海には入れない”という人たち。準備運動をし、浮き輪を用意し、海ではなくプールで慣れていただく・・・それが私たちの仕事だと考えています。

そして私たちが生徒さんに対し「もうサポートするべきレベルはクリアした」と判断したら、あとは生徒さんの自由です。もちろん、そのまま当校での受講を続けられる人もいますが、そのような場合でも、ネイティブ講師が在籍する他校さんに移られることをお勧めすることも。なぜなら私たちの役割は、生徒さんの“最初の一歩”をサポートすることだと思っているからです。

 

きっかけは高嶋政伸

私は学生時代から「英語を教えたい!」という思いを強く持っていました。でも私自身は大学に入るまで、海外旅行にすら行ったことがないほど外国とは無縁でした。

そんな私が最初に英語に興味を持ったのは、中学生の頃に見たドラマ『HOTEL』(TBS系)でした。登場するホテルマンたちが英語でお客さんとやり取りするのを見て「英語が話せてカッコイイな」と思いました。そんなささやかな憧れを抱いていたから、英語の授業には積極的に臨みました。おかげで成績は良かったですね。

その後入った大学で英文学を専攻し、アルバイトでお金を貯め、まずは大学1年の時にオーストラリアに1ヶ月留学しました。現地で受けた英会話の授業が、私たちの年齢や興味に合った内容で、私が中高時代に受けた日本の英語教育と違い、すごく楽しかったのです。「私も日本の人たちに、私が受けたような楽しい英会話レッスンを提供してみたい!」と考えるようになりました。

 

英語教育の世界へ

大学2年の時にカナダに短期留学へ。現地で出会った先生たちの教え方が上手で、それに影響を受けた私は、帰国後“英語教授法”のゼミに入りました。そこで学ぶうちに「私も英語を教えたい!」という思いがさらに強くなっていきました。

英語を指導できるようになるためには、海外にもっと長い期間滞在するべきだと思い、大学3年の時に交換留学制度を利用し、米オレゴン州にある大学で1年間学びました。英語指導法を習得する科目はありませんでしたが、自分が英語を教えることを常に念頭に置きながら日々のクラスに臨んでいました。特に私たち留学生に対して行われるESL(English as a Second Languageの略。“第二言語としての英語”と訳される)で、授業の内容や教授の指導方法などを肌で学びました。

大学卒業後、私は当時立ち上げ間もない英会話スクールに入社しました。それは自分で英語を教えるだけでなく「いつか自分自身の英会話スクールを持つ」という目標を実現するためでした。そのスクールは英語ネイティブの先生がメインで、私は入社当時、生徒さんの学習をサポートするスクールカウンセラーとして働いていました。

 

夢を実現 独立へ

一方、私が常々「いつか英語を教えてみたい」と言っていたのが奏功したのか、入社して約半年後、会社が日本人講師によるコースを立ち上げることになり、私もそのプロジェクトに、講師兼カウンセラーとして参加。ついに長年の夢を実現しました。

日本語講師事業を立ち上げてから、気づいたことがありました。私のような日本人講師が教えていた生徒さんは、笑顔が絶えないくらい、すごく楽しそうに学んでくださっていたのです。一方で英語ネイティブから教わっていた生徒さんは、楽しく学ぶ人とそうでない人が出てきていました。それは単純に語学力の問題だけでなく、生徒さんの性格も関係していました。初心者レベルで、しかも引っ込み思案な性格だと、ネイティブ講師の言うことをただ聞いているだけで、しかも言っている内容を理解しているわけでもない。一方でネイティブ講師についても、アルバイトのような態度で指導している人と、日本人の英語力向上に貢献したいと思いながら指導している人といった、歴然とした違いがありました。

そのような状況を講師として、またスクールカウンセラーとして見た時、特に“初心者レベル”“英語に苦手意識を持っている”“でも、ちょっと頑張ってみたい”という層に対しては、日本人講師の方が指導者として適しているのではないかと思いました。その会社で1年半勤務した後、半年間の留学カウンセラー経験を経て2004年、講師は全て日本人という「初心者専門マンツーマン英会話ビギン」を立ち上げました。まだまだネイティブ講師が主流で、日本人講師などほとんど存在しなかった頃のことです。

 

True BeginnerとFalse Beginner

当校はスクール名に“初心者専門”とありますが、それは“自称・初心者”という意味ではありません。

英会話の初心者には2通りあります。“True Beginner(真の初心者)”と“False Beginner(擬似初心者)”です。前者は元々英語が嫌いで、文法をほとんど忘れてしまったような人。後者は文法知識があり、英語に対しそれほど苦手意識が無かったので読み書きは出来るが、英語を話す機会が無かったために口から英語が出てこず、でも少し復習すれば思い出すという人です。他にも“何回か英会話学校に行ったけど、長続きせずに挫折した人”もそのカテゴリーに入ります。実際に他校さんで挫折した人、最近で言えばオンライン英会話で挫折した人も、当校にいらしたりします。

そのようなFalse Beginnerが、いきなり英語ネイティブを目の前にして話せるかどうかは、ご本人の性格に左右されると思います。間違いを気にせずに、自分の言いたいことは相手を遮ってでも主張するような性格なら、最初からネイティブ講師とコミュニケーションを取ることができると思いますが、日本人的な奥ゆかしさを持つ人なら、最初は日本人講師の方が適していると思います。

False Beginnerの人にはもちろん当校からスタートされることをお勧めしますが、当校での英会話レッスン受講を最もお勧めしたいのはTrue Beginnerの人です。「英語がずっと苦手だったけど、海外旅行に行った時に少しでも英語が話せたらいいな」という人に、最初の一歩として当校をご利用いただけたらと思います。

 

一人の講師と二人三脚

生徒さんは一人一人、家庭環境や職場環境、英語学習環境に至るまで違うもの。その上現在の生活状況も生徒さん同士で異なりますので、それら全て踏まえて学習内容をカスタマイズする必要があると、私たちは考えます。

そのため、当校は担当制を採用しています。つまり1人の生徒さんに対し、やむをえない事情がない限り、その生徒さんが当校に在籍している間は、同じ講師が指導するというシステムです。講師はその分1人の生徒さんにじっくりと向き合うわけですから、私たちの体験レッスン申込フォームは、他校さんのそれに比べ、明らかに記入項目が多くなっています。

また、一度何かの要因で英語学習を止めざるを得ない状況になっても、スムーズに英語学習を再開していただくためには、同じような経験を持つ日本人講師の方が適任なのではないかと思っています。それは、やはり同じ日本人だからこそ、英語学習者への理解があるからです。そのような生徒と講師の間の信頼関係が、当校の指導のベースとなっています。

 

講師は“教える人”じゃない

その信頼関係は、生徒と講師だけの間に止まりません。講師と当校との間にも、非常に大事な信頼関係があります。現在、講師は約100名在籍しており、本業として指導している人や副業として講師を務められている人など様々ですが、皆さんに当校の理念を理解していただいています。そして私を含めた当校の運営側も、各講師の強みを把握しています。

またどの講師も、自分の学習法などを主張してそれに生徒さんを従わせるようなことは絶対にせず、むしろ生徒さんに話す機会を提供し、自分は聞く側に回るような人ばかりです。「講師はあくまで“サポーター”である」ということを理解し、生徒さんの人生にスムーズに、楽しく英語を取り入れてもらう方法を考え、レッスン内容を組み立てることができる – それが当校の講師像だと思います。

 

英語で人生を豊かに

「英語が苦手だけど英会話を始めたい。だけどなかなか始められない」という人は、今でもいらっしゃると思います。そういう人たちに対して、これからも「一緒にやりましょうよー!」と手を差し伸べたいですね。

私が目指したいのは「その人の人生に英語を入れていただくこと」。だから私は、東京オリンピックを意識したことがありません。オリンピックは、あくまで英語を使うためのモチベーションの1つ。もちろん2020年に向かって英会話のスキルアップに励むのは良いことですが、それが刺激となって、その後の皆さんの人生を通じて英語の勉強に取り組んでいただけたら嬉しいです。

 

英語は、私の人生の選択肢を増やしてくれました。その中から、最終的に自分が一番やりたい仕事を選ぶことができました。それは皆さんにとっても同じではないでしょうか。皆さんが持つ専門知識に英語を加えることで、 語学力だけでなく“外からの視点”も獲得でき、結果として仕事の選択肢が増えるのではないかと思います。

 

加藤さん関連リンク

初心者専門マンツーマン英会話ビギン:www.85begin.com

 

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