Big Generators #5 岩瀬香奈子さん & アルーシャ(Part1)

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2010年9月22日(水)

Big Generators #5

岩瀬香奈子さん & アルーシャ(Part1)

ネイルサロン運営会社 代表取締役

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「日本に難民なんて
いるんですか?」
その程度の認識でした。



Generator、日本語で「発電機」。周りにも大きな影響を与えるほどの、ものすごいエネルギーを放ちながら、世界を変えていくための挑戦を続けている人たちのインタビュー「Big Generators」をお送りします。
今回は、東京・港区でネイルサロン「アルーシャ」を経営している、岩瀬香奈子さんをご紹介します。この「アルーシャ」は、普通のネイルサロンとは異なる点がいくつかあります。① ネイルアーティストは全員外国人② しかもその大半が「難民」であることです。でも、堅苦しさは一切ありません。フレンドリーな笑顔で、お客さんを迎えてくれます。そしてネイルをしている間も、お客さんとネイルアーティストたちがガールズトークに花を咲かせていました。

インタビューは2部構成です。第1部は、岩瀬さんが”難民ネイルサロン”を立ち上げた経緯、第2部は「アルーシャ」の現在と、目指すべき道についてお送りします。

*インタビュー@アルーシャ(港区虎ノ門)



English





難民の方をネイルアーティストとして雇っているネイルサロンは、他にあるんでしょうか?

いえ、存じません。外国にもあるかどうか分からないです。でもアメリカのように移民が多く、難民も受け入れている国では、ネイルサロンの従業員の中に難民の方もいるかもしれませんね。
2008年のリーマンショック以降、どこの職場でも外国人労働者から切られていきました。レストランや工場以外に仕事先が無かった難民も例外ではありません。そのような環境の中で生き続けるためには、ある程度の自分への投資が必要、というのが私のポリシーとしてあります。その点、ネイルアーティストになれば手に職をつけられますし、日本のネイル術は世界中で人気ですから、世界のどこへ行っても生活できると思います。

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難民ネイリストさんたちが手がけました。



難民問題に対処するための現実的な手段として、岩瀬さんはネイル事業を考えた、ということ
でしょうか。

そうです。難民の方の生活問題に焦点をあてれば、やはりまずは仕事、生活費のことを考える必要があります(難民だけではなく誰でもそうですが)。私はこれまでずっとビジネス畑を歩んできましたから、社会貢献とは言え、ビジネスにならないものをやっても長続きしない、という考えがありました。それに「かわいそうだから、買ってあげる、お金を払ってあげる」と消費者に思われるのも嫌ですし、継続しませんから、顧客がリピートすることも重要でした。ネイル事業は、その点をクリアでき在庫を抱えないから、ビジネスとしてイケると思いました。



ネイル業界での経験はあったんですか?

全然ありません。私は一般企業で約10年間、営業をしていました。その間にベンチャー企業の立ち上げもやったし、イギリスのビジネススクールに留学もしました。この会社を立ち上げる直前は、米系のエグゼクティブサーチ、つまりヘッドハンティング会社で仕事をしていました。年収8000万円の人を右から左へ流すような。
でも私は、以前から社会貢献事業に関心がありました。学生の時は、阪神大震災のボランティアにも行きましたし、他にもいろいろなボランティア活動をしていました。ただ、私自身がNPOのような形をとって何かをやることは全く考えていませんでした。日本のNPOのシステムだと、報酬が少ないから働いても疲弊するんじゃないかと思うくらいですから。



だから、営利企業としての難民支援事業に乗り出したんですね。でも、そもそも起業した当時から「難民を支援したい」と考えていたんですか?

それは全く無かったです。去年(2009年)1月までサラリーマンをやっていて、退職して2ヶ月後に会社を立ち上げました。でもその頃は、全然別のことをやっていたんです。
会社名の「アルーシャ」は、タンザニアの街の名前です。当時、そこでマイクロファイナンス事業(小口金融や小口保険などの総称。貧困緩和と事業収益の両方を追求)をしようと考えていた、慶応大学名誉教授の岩男壽美子先生という方がいて、私もそれに参加したいと思いました。ボランティアをしていた頃の血が騒いだのだと思います。
岩男先生と初めてお会いしたのは2008年の暮れ、まだ私が会社勤めをしていた頃でした。先生の話を聞いて、私もタンザニアに行きたいと思いましたが、暮れの忙しいときにお休みをもらえるはずがありません。会社生活もそろそろ潮時だと思っていたし、フェアトレード事業(発展途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することを通じ、立場の弱い途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す運動)にも関心があった。岩男先生からタンザニアの障がい者が作ったアクセサリーやハチミツの話を聞いて、それらを日本に輸入して販売する仕事、いわゆるフェアトレードをやりたいと思ったんです。
だけどそのためには、輸入元や販売元となる法人を作らなくてはいけない。だからサラリーマンを辞めて会社を作ることにしたんです。先ほど申したように、ベンチャー企業の立ち上げにも関わったことがあったから、会社設立もそれほど難しくは考えていませんでした。



当時の中心事業は、何だったんですか?

昔いたベンチャー企業のお手伝いですね。経営者クラブでの講演会やセミナー関連の事業とか、友人の会社の手伝いなど、いろいろやっていました。
でもフェアトレード事業に関心があることを友人に伝えたら、NPO関連のつながりがすごく増えました。当時はすでに岩男先生とのつながりもありましたし、それを知った方々が応援してくれたりしました。ILO(国際労働機関)のマイクロファイナンス責任者が来日した時、岩男先生とプロジェクトをやっているということだけで、私もプレゼンさせていただいたりしました。
そして去年11月に、初めて難民支援をされている方にお会いしました。REN(Refugee Empowerment Network 難民自立支援ネットワーク)代表の石谷尚子さんという方です。マイクロファイナンスと難民だから、似ていなくもないと思った友人が紹介してくれました(笑)
私は当時、恥ずかしいくらいに日本の難民事情を知りませんでした。「日本に難民なんているんですか?」って聞いたくらい(笑)そんな私に、石谷さんはたくさんのことを教えて下さいました。その中で、RENが行っているビーズアクセサリーのフェアトレードについてお聞きしました。
実際、見せていただいたアクセサリーはすごく精巧に作られていました。私は思いました。「これだけ手先が器用だったら、ネイルをさせてもイケるのではないか」。ネイルなら在庫を抱えることはないから、事業として成り立つのではないか、と。

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そこで初めて「ネイル」が出てきたんですね。

私自身もネイルが好きで、お店にはもちろん行っていましたが、趣味で自分でもやっていましたから。それに、絶対に爪って伸びますよね(笑)ビジネスをするなら消耗品の方がいいし、中でもネイル関連事業は収益率が高いことを、昔から聞いていました。
それに、ハンデを背負った人こそ収益率の高いビジネスに参加するべきだ、と思いました。だって、たとえ他店より料金設定を低くしても、高い収益率でカバーできるんですから。そのようなビジネスを通じて日本社会に入り込んだ方が、彼らにとっても良いのではないか、と思ったんです。
そういうことを石谷さんに話したら「ぜひやって下さい!」ってお願いされて、それで私も「やろう!」という気になりました。そのうち他の難民支援団体の人たちにも私のアイデアが広がって、私のところに話を聞きにきたいという人が増えていきました。



つい先日まで、日本にいる難民のことを知らなかったのに・・・

そうです。だから急いでプレゼン用の資料を作りました。だって、せっかく皆さんがいらしたのに「いえ、あの時の思いつきですから・・・」とは言えませんよね(笑)
ネイルを通じた難民支援事業、というコンセプトが固まってから、私はネイルスクールに通い始めました。それまではお客さんとしてネイルサロンに行ったことがあっただけだから、そのレベルでは難民の人たちに教えられないと思ったんです。
プロのネイリストをトレーニング用に雇えればいいですけど、何ヶ月雇うかも分からなかったし、月に20〜30万円払うなんて、とてもじゃないけど私の会社では無理です。それなら自分で覚えた方がずっと安上がりだし、ネイリスト側の気持ちを多少なりとも理解できる。そういう思いもありました。何より、私がネイル好きだったし。
だから2ヶ月毎日通って、ネイル施術をマスターしました。そして2010年2月から難民の人たちへのネイル研修を始めました。研修は定員を8人に設定したのに、その前の研修説明会に20人以上の難民の方々が来たんです。



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Part2に続きます。こちらをクリック!











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