故郷を取り戻しても 私がバリにいる理由
福岡県出身のワヤン恵美さん。ひょんなことからバリ島にハマり、現地の方との結婚を機にバリへ移住し、さらにインドネシア国籍まで取得しました。以来”ワヤン恵美”さんとして、約30年にわたり現地で暮らしています。数年前に公開されたインタビュー動画では、国籍変更の経緯や、自身の波乱万丈な人生が語られました。
そんな恵美さんが、コロナ禍を経たバリ島の変化や、ご自身の心境の変化について、My Eyes Tokyoにご寄稿くださいました。長年愛してきたバリ島、そしてコロナ後に改めて魅力を感じるようになった故郷・福岡。二つの場所のつながり、それぞれの場所への思い、そして恵美さんが感じるバリ島の魅力をお届けします。
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お台場で咲いたバリの輪
今年(2026年)5月下旬、お台場のアジアレストランで「バリ・フェスティバル@トーキョー」を開催しました。バリの音楽や踊り、食をもっと知ってほしいと思い、企画しました。ご参加者からも料理やイベントの雰囲気が良かったという声をたくさんいただきました。
開催に向けて日本側で動いてくれた東京の友人のおかげで、実現にこぎつけました。なぜなら私は直前まで体調が悪く、本当に日本に来れるのか分からない状態だったからです。今も万全ではないですが、運よく来ることができました。50人ほどの参加者がお互いに連絡先を交換したり、友達同士になったりと、皆さんがつながっていく様子を見るのが本当に嬉しかったです。
30年ぶりにつながった故郷
私はバリに住み始めて、今年で28年になります。結婚を機にインドネシア国籍を取得しました。主人の父から「息子を日本へ連れて行かれたら困る」と反対されたこともあり、主人と話し合って国籍を変えることを決めたのです。
長い間、日本へ帰ることは私にとって贅沢でした。バリには義母や叔母がおり、限られたお金は家族のために使うべきだと思っていたからです。
2017年、ある方からのご招待で大阪を訪れたのが、私にとって19年ぶりの帰国でした。当時は心のどこかで「死ぬまでに一度は福岡に帰れたらいいな 」と、あふれ出そうになる郷愁をこらえました。
そんな私の背中を押してくれたのが主人でした。従兄弟と再び連絡が取れるようになったことを話すと「みんなが元気なうちに福岡へ行っておいで」と勧めてくれたのです。そして2023年、私は30年以上ぶりに故郷へ帰ることができました。
久しぶりの福岡は大きく変わっていました。でも親戚たちは昔と変わらず温かく迎えてくれました。帰ってみて、私はあらためて「やっぱり福岡が大好きだ」と感じました。
最近では、父方の故郷である福岡県糸島市との縁も生まれました。糸島はバリと同じように「お金がなくても幸せ」という価値観を持つ人が多い地域。福岡市の隣にもかかわらず、ゆったりとした空気が流れていて、どこかバリに似ている場所です。
そんな糸島とつながったきっかけは、バリで引き受けた通訳の仕事。その依頼主が糸島在住の事業家だったのです。その後、糸島でイベントを共催させていただくなど、交流が広がっていきました。
私がバリで行っている、日本人旅行客向けのアテンドの仕事でも、福岡をはじめ九州出身のお客様も多くいらっしゃいます。そのおかげか、現在はバリの九州県人会の幹事も務めています。かつては縁遠く感じていた故郷ですが、福岡とのつながりを取り戻したことで「自分は本当に運がいい」と思えるようになりました。
福岡とのつながりを取り戻したことで、ようやく私の心が満たされました。今では宅配便の箱に”福岡”と書かれているだけで嬉しくなるほどです。
バリの本当の魅力って?
バリは”ご縁のある人が来る場所”だと思います。
今回、5月22日から6月5日まで約2週間帰省しました。その間に立ち寄った免税店の日本人スタッフさんが、突然インドネシア語で「テレマカシー(Terima kasih:ありがとう)」と声をかけてくれたのです。話を聞くと、その人はジャカルタに行ったことがあり、今度はバリにも行く予定だというので「その時はぜひ私にご連絡ください」とお伝えしました。本当にご連絡があるかは分かりませんが、不思議なご縁を感じる出来事でした。
バリは観光地として有名ですが、それ以上に信仰が生活に深く根付いた島です。人と出会うと宗教を尋ねるのも、ごく自然なこと。ご先祖様や神様とのつながりを大切にし、忙しくても宗教行事を欠かしません。そうした文化が、人への気配りや思いやりにつながっているように感じます。
そんなバリに長年住み、また日本生まれならではのおもてなし精神も手伝って、私は「この人は何を求めているのか」「どうしたら喜んでいただけるのか」を考えながら、日本人観光客のアテンドをさせていただいています。観光地のご案内だけでなく、病院への同行やホテルでのトラブル対応、時には警察関係の手続きまで、お客様のバリ滞在全体を支えるお仕事。そうやって、お客様から「また絶対バリに来ます」と言っていただけたら、私も心の中でガッツポーズです(笑)
バリには海や山、美しい文化があります。でも最後に心に残るのは、やはり”人”です。日本に来た外国人観光客も、日本の魅力の一つとして”人”を挙げますが、それとはまた少し違います。バリの人たちには、先ほど言った気配りや思いやりだけでなく、独特の温かさ、そして何と言っても素敵な笑顔があります。
何度もバリに来ている日本人のお客様も「結局、心に残るのは島の人たちの笑顔だ」とおっしゃるほどです。

バリでは”人生最後のお祭り”と呼ばれるお葬式。
”催眠術”に注意!
バリには素晴らしい魅力がたくさんありますが、一方で旅行者を狙った犯罪もあります。
私は一人で来られるお客様に「知らない人について行かないこと」を必ずお伝えしています。日本ではほとんど聞かないことだと思いますが、2人1組で道端で人に話しかけ、いつの間にか催眠術をかけて、意のままに操ってATMからお金を下ろさせるという事件が起きます。
相手は片言の日本語を話せることもあります。海外で日本語を聞くと親近感を覚えますが、彼らが話せる理由が善意とは限りません。日本語をお金を稼ぐための手段として使う人もいます。特に女性旅行者は、年配の女性に声をかけられると警戒心が薄れがちです。
だからこそ、日本語が上手だからといって話し込みすぎないこと、知らない人からもらった食べ物を口にしないことなど、基本的な注意を忘れないでいただければと思います。
ようこそ ”私の家族がいる場所”へ
私はもうすぐ、バリで暮らした年数が日本で暮らした年数と同じくらいになります。福岡は今でも大好きですが、振り返ると私は本当にたくさんの人に支えられてきました。「遠くの親戚より近くの他人」という言葉の通り、多くのご縁に助けられてきたからこそ、私も出会った人たちを大切にしたいと思っています。
30歳を過ぎてからのバリでの人生は、とても濃いものでした。主人や息子たちをはじめ、家族に支えられながら家庭を築き、多くの経験を重ねてきました。傷ついたこともありましたが、それ以上に助けてもらったことの方がずっと多かった。だから今でも人が大好きなのです。
日本や福岡は、私にとって”懐かしい場所”。一方、私にとってバリは、家族がいて、友人がいて、自分の居場所がある”帰るべき場所”です。だから日本からのお客様をご案内するときも、観光地を案内するというより、自分の故郷や家に招くような気持ちでお迎えしています。

「ここが私の大好きな人たちがいる場所です」
そんな思いで、いつもお客様と向き合っています。
ワヤン恵美
Ni Wayan Emi Ariyanthi

1998年にバリ島に渡航。地元の男性と結婚し、インドネシア国籍を取得。さまざまな仕事を経験しながら生活基盤を築く。現在は日本人向けのアテンドとして活動するほか、着物リメイクで作る服やバッグの販売も行う。バリ九州県人会幹事。
関連リンク
Instagram:@wayanemi3588
ワヤン恵美 現地ガイド/アテンド予約ページ@BUYMA TRAVEL:https://travel.buyma.com/service/g191029000002/
着物リメイク服・バッグ『HIKARI COLLECTION BALI』:@hikaricollectionbali


