話す力・聞く力・人間力 – 英語力を伸ばす”3本の矢”

内藤正人
海外渡航者の不安に寄り添う英語メンター
※インタビュー記事はこちら
英語上達のために必要なこと
「英語が上達するために必要なことは何ですか?」と聞かれたら、私はまず”目標を持つこと”だと答えます。自分自身の経験から言っても、目標がないと英語学習は続きません。

今私が接しているのは、目標が比較的明確な人たち。例えば海外の学校や職場で困らないようになることが目的なので、ポイントを突いたアドバイスができます。また目的がハッキリしていれば、英会話やディベート、プレゼンなど幅広い分野の練習に、私も幅広く対応させていただくことができます。
ただし、その目標は途中で変わってもいい。大切なのは「今、自分は何のために英語を学んでいるのか」が分かっていることです。
それを前提に、海外渡航を予定している方々や、それに向けて英語学習に取り組まれている方々約100人とお話をさせていただいた経験、および私自身が過去にオーストラリア現地企業での就労や、現地大学院で学んだ経験から得た「英語力向上へのヒント」をお伝えしたいと思います。
「英語力 = 英会話力」は自然な考え
多くの人は”英語ができる=話せること”だと思っています。実際”Do you speak English?”とは聞いても”Do you read English?”とは聞きません。だからどうしても”話すこと”に意識が向きます。
私の周りにも、海外に行く予定もなければパスポートすら持っていない人たちがいますが、それでも「英語を話せるようになりたい」と言います。「英語を読めるようになりたい」という人はあまりいません。つまり多くの人は、英語そのものへの興味よりも、人とつながりたいのです。
しかも世界を見渡せば、英語を母語としない人のほうが圧倒的に多い。英語はネイティブ同士だけの言語ではありません。だからこそ、さまざまな背景を持つ人と話す経験に価値があると思っています。
”メロディ”と”音符”
私はTOEICを否定するつもりはありません。高得点であれば、それだけ基礎力があるということです。
ただ、TOEICの点数が高くても会話が苦手な人がいます。逆に、600点程度でも驚くほど自然に英語を話す人もいます。そういう人たちを見ていると、英語には文法知識や単語力だけでは計れない部分があると感じます。
スコアや資格のレベルに関係なく、英語を話せる人たちにあるのは、英語ならではの会話の流れや、言葉の選び方に対する感覚。言い換えれば”メロディを掴んでいる”ということです。

私は英語を、よく音楽に例えます。単語や文法は”音符”、実際の会話は”メロディ”という感じです。
TOEICで高得点を取れる人でも英語が話せない理由は、音符の知識ではなく、メロディに慣れていないことにあります。メロディと音符が結びついていないと、いくら音符の知識があってもメロディは口から出てきません。
会話には”短いやり取り””じっくり聞く場面””一人が話し続ける場面”などのパターンがあり、それを感覚的に理解できると「今は短く返すべきか」「じっくり聞くべきか」が判断できるようになります。英語、特に会話が苦手に見える人の多くは能力不足ではなく、この切り替えの感覚が身についていないだけです。
また “How are you?” のような表現に対する返事についても、深く考える必要はなく「会話を続けるための合図なんだ」と思って軽く返事すればOKです。
ぜひ一度、ネイティブ同士の会話のトーンや流れを、リアルでも動画などでも良いので観察してみることをお勧めします。
ただしネイティブ的な発音やスラングにこだわる必要はありません。英語には多様な形があり、世界では様々な英語が使われているため、”誰にでも伝わるシンプルな英語”こそが最も実用的だといえます。
リスニングの壁は成長の証
話す力と同じくらい重要なのが”聞いて理解する力”です。実際、話すことばかりに意識が向きすぎると、相手の意図を理解しないまま自分の発話だけを目的にしてしまうことがあります。しかしそれでは、相手から信頼されにくくなります。
一方で、もしあなたが今「英語が聞き取れない」 という悩みを持っていたら、どう感じますか?実際に、ネイティブスピーカーの言っていることが分からず、それがもとで英語の勉強を断念したり、最悪のケースだと渡航先から帰国したりする残念なケースを目にします。
でも誤解しないでください。それは”成長の証”なのです。
英会話を始めたばかりの頃は、自分が話すことに必死です。相手の話が50%しか分かっていなくても、とにかく頭の中で文章を作って会話を続けようとします。しかしある程度話せるようになると、今度は相手の話をもっと理解したいと思うようになります。その理想と”聞き取れない”という現実のギャップに気づくのです。

つまり「相手の話していることの半分しか聞き取れない」という新たな課題に気づいたということ。だから私は「相手の話が聞き取れないと悩むのは、決して退化や衰退ではなく、むしろ上達した証拠なんですよ」と伝えています。
流暢さやスラングの知識よりも、相手の話を理解し、質問に適切に答えられることの方が大切です。分からなければ聞き返し、会話のテーマを追いながら、場面や相手の感情に適した返事をすることを心がけてください。
ラジオ→新聞→雑誌→小説の順でレベルアップを
そしてもう一つ大事なのは続けることです。リスニングを伸ばしたいなら、分からなくても聞き続けるしかありません。最初は何も聞き取れなくても、続けていると必ず「あれ、前より分かるぞ」と感じる瞬間が来ます。
初心者に一番お勧めしたいのは、ラジオのニュースです。ニュース番組の英語は標準的で、発音やイントネーションも聞き取りやすく、文章構造もしっかりしています。さらに現地の出来事や地域情報も入ってくるので、その国の社会や文化も理解できます。
例えばカナダへ行くならカナダのラジオ、オーストラリアへ行くならオーストラリアのラジオを聴くのがおすすめです。今はインターネットで簡単に聞けます。もちろんテレビのニュース番組でも構いません。
その次のステップが新聞。それがスムーズに読めるようになったら雑誌に進み、さらに語彙力を広げていきます。新聞は標準的な英語を学ぶには最適ですが、使われる表現がある程度決まっています。逆に雑誌には、新聞に出てこない表現や語彙が多く登場します。
そして最終的に挑戦していただきたいのが小説です。小説は作家ごとの個性的な表現があり、言葉のニュアンスや文化的背景も理解しなければ本当の面白さは味わえません。小説を読んで内容に感動できるようになったら、かなり高いレベルに到達したと言えると思います。
最後に勝つのは”キャラ”
結局のところ、海外で幸せに暮らしている人や成功している人を見ていると、最後はキャラクターが鍵になると思います。 もちろん最低限の英語力は必要です。でも、その先を決めるのはアクセントでも流暢さでもありません。かといって明るい人が有利という意味ではなく”その人らしさ”が出ていることが大切です。
英語を話すと、普段の自分とは違うキャラクターを演じなければいけないと思う人もいます。でもそうではありません。自分らしく話せば良いと思います。
そしてもう一つ伝えたいのは「英語力の向上は自分ではなかなか分からない」ということです。毎日少しずつ伸びているからこそ、自分では変化に気づきません。だから焦らなくて良いのです。焦り過ぎると、人間関係までぎくしゃくしてしまいます。

英語は1日で劇的に伸びるものではありません。でも確実に伸びています。だから安心して、引き続き英語学習を頑張ってくださいね!
内藤正人

オーストラリアでの語学留学を経て、現地大学院でジャーナリズムを専攻。その後、現地政府観光局に勤務。帰国後は海外研修団体での連絡業務や研修生への英語指導などを経て通関関連会社に就職。現在は会社勤務のかたわら、海外渡航予定者や現地滞在者への英語トレーニングおよび学習へのメンタリングを行う。
※内藤さんインタビュー@MET:myeyestokyo.jp/68020


