加藤翼さん Part2

構成:徳橋功
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Tsubasa Kato
体験型リサーチ会社 ファウンダー

海外に商品を売り出すなら、外国人への事前ヒアリングは必須だと実感しています。

 

2014年秋、私たちMy Eyes Tokyoはセルビア大使館で大規模なイベントを開催しました。その年の5月にセルビアを襲った洪水の被災地に向けたチャリティーイベントでしたが、もちろん私たちだけでは成し得ない一大プロジェクトでした。

共催者は「The International Center in Tokyo(ICT)」という国際交流団体。2012年創立で、過去に何百もの国際交流イベントや日本文化体験ワークショップを開催してきました。この団体は、一人の日本人女性がかつての赴任地であるニューヨークで体験したことを元に、「日本に住む外国人たちにとって“家”となる場を提供したい」という思いから立ち上げられました。

そして長らく非営利で行っていたそれらの活動から、ビジネスの種が生まれました。活動を通じて築いてきた豊富な外国人ネットワークを活用し、Made in Japanの商品の海外販路拡大に貢献する「NeedsArch」という事業です。

NeedsArchとは一体どんなものか、これまでどのようなことを行ってきたかなどを、ICT代表兼NeedsArchファウンダーの加藤翼さんにお聞きしました。

*ICTの活動や立ち上げの背景についてはこちらをご覧ください。

*写真提供:加藤翼さん

 

埋もれているMade in Japanを世界へ

NeedsArchの名前の由来は「企業や外国人などあらゆる人たちの“ニーズ”の“アーチ(架け橋)”になる」という私たちの思いです。元々の出発点は「外国人の意見を日本国内で気軽に聞きたい」という企業向けに始めたサービス。「海外に進出する前段階として、日本にいる外国人に向けた商品テストをしてほしい」「海外の展示会に出展したいが、費用がかかるので国内で事前ヒアリングし、海外進出のヒントだけでも得たい」・・・そのようなニーズがあると感じ、このサービスを立ち上げました。

この事業を考えたのは、2014年の秋頃です。私たちはICT(The International Center in Tokyo)という国際交流団体で、主に一般向けにイベントを行っていました。当時はイベントの開催にも慣れてきた頃だったので「もう一段階上のことに挑戦してみたい」と思うようになりました。その頃の私にとって、それは“企業とのコラボレーション”でした。

そんな折に、イベントに参加してくれていた外国人が「母国に帰るときに、おみやげにこんな日本のものを買って行ったよ」と言って見せてくれました。

私はその時ひらめきました。「日本には海外の人たちにとって魅力的な商品がたくさん埋もれているのではないか?」と 。すでにメディアなどで有名になっているものではなく、魅力的だけど世界では全く知られていない商品を発掘し、世界に届けるお手伝いがしたい – そんな思いが募ってきました。ICTが開くイベントに集まる外国人たちに日本の商材を見てもらい、「これなら私も欲しいわ!」「こういう風にアレンジすれば、僕の国でも売れるんじゃないかな?」などの意見をいただく。そういうサービスは、今後企業からも求められるのではないか – そのような読みもありました。

 

顧客第1号 G7サミットに

チャンスは意外に早くやって来ました。思いがけないきっかけでご縁をいただいた「一心堂本舗」さんとのコラボレーションを、2014年11月にさせていただけることになったのです。一心堂本舗さんが当時売り出し中だった「歌舞伎フェイスパック」の商品モニターを、ICTのイベントに参加してくださっている外国人にお願いしました。


「歌舞伎フェイスパック」商品モニタリング グループインタビュー(2014年11月29日)

すでに製品は出来上がっていたので、あくまで将来に向けたモニタリングでしたが、「フェイスパックではなくフェイス“マスク”の方が良いのでは?」「枚数は海外では1パックに3枚が普通」「成分や効能の表記をもっと大きく表示して、見やすくした方が良いと思う」など、具体的な意見を集めることができました。一心堂本舗さんも「海外に売り出すなら、絶対に事前ヒアリングが必要だ」とお感じになったそうです。

その後この「歌舞伎フェイスパック」は、去年(2016年)5月に行われた伊勢志摩サミットで、出席した各国首脳陣や代表団、海外メディアなどに配布されることが決定しました(*詳しくはこちら)。それに向けてデザインやパッケージを変更するため、再度フェイスパックの商品モニタリングが行われました。英語での表記の仕方から、商品のどの部分にどのような解説を載せるべきかを、一心堂本舗さんやデザイン会社の方を交えて真剣に話し合いました。2014年秋の初回モニタリングの経験が、その時に活かされたのだと思います。

 

海外進出には事前リサーチが必要不可欠

一心堂本舗さんとのプロジェクトから始まった商品モニタリングは、これまでに10件以上行われました。例えば太洋塗料さんという会社には「マスキングカラー」という、何度でも貼って剥がせる特殊なペンの、フランスの展示会への出品に向けたモニタリングをさせていただきました。外国人モニターからは「ネオンカラー(蛍光色)のラインナップもほしい」という意見が聞かれ、実際にそれを反映して商品を作ったら、フランスで見事ヒットしました。


「マスキングカラー」商品モニタリング ワークショップ(2015年10月17日)

他にも富田染工芸さんという会社が作られた、中東や東南アジア向けのヒジャブ(イスラム教徒の女性が髪などを覆う布)のモニタリングも担当させていただきました。ムスリムの人々全てに対し同じヒジャブを用意すれば良いわけではなく、地域によって生地の強度に対する好みが変わってきます。またTPOに合わせてヒジャブの長さも変わってきますし、ヒジャブにふさわしくない模様というのもあります。デザイン面や機能面で、本当に現地で売れるものを作るためには、やはり事前リサーチが必要なのだと実感した、もう一つの例です。


ヒジャブの商品テストおよびモニタリングインタビュー(2016年1月30日)

企業だけでなく、非営利事業ともコラボレーションさせていただきました。“東京の伝統工芸品の魅力を国内外へ発信する”ことを目的として東京都中小企業振興公社さんが実施する「東京手仕事」というプロジェクトに参加させていただきました。東京手仕事さんの商品の一部である江戸切子、組み紐、型染めといった、東京の伝統工芸品の海外展開に向けたモニタリングを行いました。東京手仕事さんが扱われている工芸品はいずれも高価のため、「実際に使ってみる体験を付けて販売した方が良い」というご意見が聞かれました。


江戸切子・型染め・組み紐体験(2016年10月〜11月)

最近ではIT系も扱っており、狂言や日本画家展覧会の鑑賞用の多言語アプリのモニタリングをさせていただきました。


浮世絵師・日本画家の河鍋暁斎の展示会「これぞ暁斎!」(This Is Kyosai!)の多言語アプリモニタリング(2017年3月2日)

 

モニタリングではなく“体験”を提供する

これまでの事例をいくつか挙げさせていただきましたが、私たちが外国人たちの意見を集める方法は、主にインタビューです。質問事項を細かく設定し、商品の手触りや使い勝手(例:1回押した時に出る量はどのくらいか、置いた時に倒れないか、キャップが閉めにくくないか etc)、デザイン、色、加えた方が良い機能、無くした方が良い機能、価格などについて、率直な意見を聞きます。主に3人1組で行うインタビューで、1組あたり30〜40分かけてヒアリングします。外国人は結構おしゃべりな傾向があるから、やはりヒアリングの時間は長めに取っておいた方が良いですね(笑)

私たちのようなモニタリングサービスを行っている会社さんは、数多く存在します。そのような方々と私たちが異なる点は、私たちが「国際交流団体を母体としていること」だと思います。外国人モニターは約60の国および地域出身、1,200人超いますが、彼らは全て私たちが主催したイベントに参加してくれた人たち。だから全員とお会いしたことがあります。単なる発注元と受注元の関係では決してありません。しかも彼らは、私たちが開いてきた日本文化体験イベントに参加してくれているので、日本の文化背景から生まれた商品に対してきちんと自分の意見を仰ってくれる。信頼性は非常に高いです。

さらに同業他社さんと私たちが最も異なる点は「商品モニタリングをイベント化する」ということだと思います。他の会社さんの多くは、商品モニターに謝礼を支払ってモニタリングをしてもらうと思いますが、私たちは企業訪問や商品体験そのものをイベントやワークショップにすることで、単なるモニターではなく、個性を持つ多国籍な人々がそれに参加し、楽しみながら商品を体験します。それが私たちのスタイルです。またモニタリングが終わった後に、外国人を集めて商品体験イベント(宣伝やPRなどを含む)を開くことも可能です。それはやはり、これまでにイベントを何百回と開催し、ノウハウを蓄積してきた私たちだからこそ出来ることだと思います。

 

全ては「日本の魅力を伝えたい」から

今後は外国人モニターを増やし、リサーチ案件も増やしていきたいと思います。将来的には地方自治体とのコラボレーションも視野に入れており、地方にある魅力的な特産品を海外に紹介する際のお手伝いをさせていただきたいと考えています。またその特産品を使った、海外で高い評価を得る新商品の企画にもご協力させていただければと思っています。

そしてゆくゆくは、リサーチの次段階であるコンサルティングや、海外向けの商品ブランディングまで担当させていただきたけたらと考えています。


ICT創立5周年&NeedsArchキックオフ記念イベント(2017年6月3日)

 

最終的な目標は、私たちがワンストップでリサーチからコンサルティング、ブランディングまでできること。将来的には物販や事業投資までできればと思っています。なぜなら、私たちは普段から「日本の素晴らしい商品をいろんな人に見てほしい、使ってほしい!」という思いでこの仕事に携わっているからです。自分が良いと思った商品を自分の手で直接紹介できたら、本当に最高ですね。

 

翼さん関連リンク

NeedsArch:www.needsarch.com
The International Center in Tokyo:www.intlcentertokyo.com(英語)

☆当事業の源となった国際交流事業についてはこちらをご覧ください。

 

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