第10回 日本国際漫画賞 授賞式
取材&構成:徳橋功
撮影:外山豊
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今年も「漫画のノーベル賞」の季節がやってきました。
「漫画の本家本元である日本から、若き漫画の旗手たちに“漫画のノーベル賞”のようなものを贈りたい」という麻生太郎外務大臣(当時)の思いから2007年に創設された 「日本国際漫画賞」。今回で10回目を迎え、過去最多の55カ国・地域から296作品が応募、しかもエストニアやクウェート、コンゴ民主共和国、パナマから初めて出品されました。受賞作品として14作品を選出、それらから選ばれた入賞作品のうち1作品、優秀賞3作品、最優秀賞1作品を表彰する授賞式が、2月6日に明治大学で開催されました。
実行委員長・岸田文雄外務大臣の代理を務められた外務大臣政務官、小田原潔氏による挨拶で、式は幕を開けました。
「漫画には、人と人をつなぐ力があります。ペンと紙があれば、誰でも漫画を描ける手軽さがある一方で、漫画は言葉だけでは伝えることのできない豊富なイメージを伝達することができます。日本から世界に広がる漫画文化を通じて、国際交流と相互理解の輪を広げたい – このような思いと共に、日本国際漫画賞は10年前に創設されました。今回の受賞をきっかけに、それぞれの国において、漫画のさらなる発展と、漫画を通じた国際交流に貢献していただければ幸甚です」
その後、受賞者の発表へ。
入賞
『忍者の秘密 Secrets of the Ninja』
作者:アキコ・シモジマ氏(日本)
原作者:ショーン・マイケル・ウィルソン氏(イギリス)
<審査委員長・里中満智子氏による寸評>
「日本人が忍者に詳しいかというと、意外とそうでもない。凡人には窺い知れない、職人の世界です。それを丁寧に忠実に漫画にした、とてもユニークな作品です」
優秀賞
『スカベンジャー scavengers』
作・原作者:韓祖政氏(中国)
<審査委員長・里中満智子氏による寸評>
「貧しさの中でもしぶとく生きる老婆の執念と気持ち良いくらいの覚悟が描かれていました。社会性のある素晴らしい作品でした」
『闇の心 THE HEART OF DARKNESS』
作者:ローラ・イオリオ氏およびロベルト・リッチ氏(イタリア)
原作者:マルコ・コズィモ・ダミコ氏およびローラ・イオリオ氏(イタリア)
<審査委員長・里中満智子氏による寸評>
「時間や空間の観念を乗り越えたアイデンティティ確立の物語だと思いました。“存在とは何か”がテーマで、大変恐ろしい病気になるのですが、そこに流れる温かさが作品を深みのあるものにしたと思います」
『地獄門 Gateway to Underworld』
作・原作者:カン・ティエウ・ヒー氏(ベトナム)
<審査委員長・里中満智子氏による寸評>
「思わぬ死を宣告され、魂の選別にかけられている恐ろしさがひしひしと伝わってきます。本当に続きが読みたくなる作品です」
最優秀賞
『剣の師 The Master of Arms』
作者:ジョエル・パルノット氏(フランス)
原作者:グザビエ・ドリゾン氏(フランス)
<審査委員長・里中満智子氏による寸評>
「全編、血と汗と寒さと飢えに満ち溢れています。作品自体はフィクションですが、ドラマは事実以上に人々の心に訴えるものがあります。人間が命懸けで歴史を刻んできたのだということがひしひしと伝わってきます。作者も命懸けで描いたのだろうと思います」
審査委員長の漫画家・里中満智子氏は「世界中から選ばれたこれらの作品について“読者の皆さん、もっと存在に気づいてください”と言いたいくらいです。これからも一緒に、世界の漫画のために頑張っていけたら嬉しいです」と述べました。
授賞式の後は場所を移して懇親会。小田原潔 外務大臣政務官による乾杯の後、各受賞者が率直な気持ちを語りました。
最優秀賞『剣の師』原作者
グザビエ・ドリゾン氏(フランス)
「このフランス的な物語が、地球の反対側にある日本で評価を受け、またそれによって世界的な反響を得る栄誉を得たことに、深く御礼申し上げます。今回の受賞はジョエル・パルノット(作画家)と私に活力と感激をもたらしてくれました。この大きな喜びが私共に、さらなる飛躍のため努力する力を与えてくれることは間違いありません」
優秀賞『スカベンジャー』 作・原作者
韓祖政氏(中国)
「このようなハイレベルで国際的な賞を受賞し、自分の作品がこの日本という漫画大国で認められたことが非常に嬉しく、私自身にとってとても大きな励みになります。漫画を仕事とするまでになった現在、まず何より、井上雄彦先生に感謝申し上げます。井上先生の『スラムダンク』という作品に出会わなかったら、私はこれほど漫画を愛し、アートを愛することは無かったでしょう」
優秀賞『闇の心』 作者
ローラ・イオリオ氏(イタリア)
「私はアニメを見て育ちました。漫画を描くことで絵を描くことの喜び、絵を描くことへの愛情を深めてまいりました。日本の漫画家の先生方には、私が幼少の頃から、イマジネーションの力を育ませていただきました。例えば偉大な宮崎駿先生は、魔法の世界や空想上の生き物を思い描くということを教えてくださいました」
優秀賞『闇の心』 作者
ロベルト・リッチ氏(イタリア)
「この賞をいただいたこと、こうして温かく歓迎していただいたこと、さらには私たちを一つにしてくれる“MANGA”という合言葉のもとに、この大家族の一員として私を迎え入れてくださったことは、感謝の念に堪えません」
優秀賞『地獄門』 作・原作者
カン・ティエウ・ヒー氏(ベトナム)
「私の国ベトナムでは、漫画産業が発展しています。私の作品が受賞したことにより、若い漫画家たちが一層努力し、ベトナムの読者たちが自国の漫画に対しより自信を持つことができます」
また、マンガ・アニメ・ゲーム議員連盟会長 古屋圭司氏からの祝辞も読み上げられました。
「日本が世界に誇る文化“MANGA”を、ALL JAPANで世界に広め、国際交流の様々な場において発信されていくことを祈念いたします」
なお受賞者は授賞式への出席のほか、出版社やアニメーションスタジオ、漫画関係ミュージアムなどを訪問し、帰国の途につきました。
関連リンク
日本国際漫画賞:www.manga-award.mofa.go.jp
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