留学生とともに考える 日本のこれから

 

小野朋江
留学生就職支援会社 代表

 

15年で変わったもの 変わらないもの

みなさまこんにちは。ASIA Linkの小野です。

2011年10月に留学生就職支援会社“ASIA Link”を個人事業として創業し、2016年9月に株式会社化しました。これまでに約300社と関わらせていただき、そのうち数十社とは継続的にお取引をいただいています。多くは海外展開を進める中堅企業です。

振り返ってみると、私たちの成長は、自分たちの力だけではなく、国内外の環境の変化とともにあったと感じています。

日本企業のアジア進出ニーズは高く、地理的・文化的な近さや経済成長を背景に、アジア人材の需要は拡大してきました。創業当初は、それまでの中国への進出だけでなく、タイやベトナム、インドネシアといった東南アジアへの関心も高まっていました。

もう一つの環境の変化が、日本の人手不足です。単なる人員不足ではなく、優秀な人材が確保できないという意味での不足が、ここ数年で急速に進みました。そして企業側の外国人に対する抵抗感も大きく減り、積極的に受け入れる姿勢へと変わってきています。

日本人学生の減少により、新卒採用が計画通りに進まない企業も少なくありません。そうした中で、留学生の存在感は確実に高まっています。”新卒社員が全員留学生”という企業も、いまでは珍しい話ではありません。

 

メーカー志望=安定志向?

創業当初は幅広い業界の企業に留学生をご紹介していましたが、近年はメーカーへのご紹介が増えています。自動車部品、機械、精密部品、半導体といった分野です。

メーカーはエンジニアと営業の両方を必要とするため、理系・文系どちらの学生にも活躍の場があります。留学生全体では文系が約8割を占めますが、私たちは理系人材の確保にも力を入れ、登録者やイベント参加者が文理半々になるように努めています。

ただ一方で”日本は技術の国”というイメージは以前より弱まってきていると感じます。

興味深かったのは、昨年(2025年)行った調査結果です。メーカー志望の留学生は、比較的安定志向が強い傾向が見られました。「モノを作り続ける限り潰れにくい」「IT企業は勢いがあってもいずれ衰退する」という理由でメーカーを選ぶという声です。

一方で、イノベーションを起こしたいと考える人材がメーカーにあまり関心を持っていない現状には、少し危機感も感じています。

また、留学生が挙げる”技術力の高い企業”は、アメリカや中国の企業が中心で、日本企業ではトヨタやソニーといった歴史ある企業がわずかに入る程度でした。これは、日本から新しい存在感のあるメーカーが生まれていないという認識にもつながっているのかもしれません。

だからこそ、メーカーは”安定しているから選ばれる”のではなく”挑戦できるから選ばれる”存在になっていく必要があると感じています。


ASIA LINK主催の「メーカー就職2027」。グローバルに事業を展開する15社のメーカーと、日本国内外で学ぶ134名の留学生が集結。当イベント終了後に留学生が出展企業に応募した件数は683件にも及んだ。
2026年3月

 

”日本企業に就職する”ということ

弊社に登録する留学生には、日本企業に対するネガティブなイメージはほとんどありません。

ただし留学生全般には、入社後に比較的早く転職するケースがあるのも事実です。

日本の雇用制度は、新卒一括採用と長期雇用を前提とし、企業が人材を育てる代わりに長く働いてもらう仕組みです。つまり企業は”人材を採用する”というよりも”人材に投資する”という考え方に近いと思います。この背景を丁寧に説明すると、多くの留学生はとても納得してくれます。

自身に投資をした会社で長く働き、成果を出すことで応えていく。その意識は留学生にとっても、とても大切だと感じています。

 

”選ばれる国”であり続けるために

国同士の関係が悪化しても、日本に来ている留学生への影響はほとんどあまり感じません。政治と個人の意思は別であり「日本で働きたい」という気持ちは比較的安定していると感じます。

ただ、過去には政治家の発言や報道の影響で「日本での就職をやめようか」と考える留学生が出てきたこともありました。数としては多くはありませんが、本人やその家族にとっては不安材料になったのだと思います。

最近特に気になっているのは、在留資格審査の厳格化です。これまで問題なく通っていた企業でも、急に追加書類を求められるケースが増え、審査の遅れや企業の負担増につながっています。

私が最も懸念しているのは、日本が留学生にとって”選ばれない国”になってしまうことです。

世界中で優秀な人材の獲得競争が激しくなる中、日本の魅力が相対的に下がれば、自然と他国に流れていきます。これは政策だけの問題ではなく、経済や社会全体の受け入れ姿勢にも関わる問題だと思います。

 

共に働くことで生まれるつながり

最後に、私たちが大切にしていることについてお話しさせてください。

ASIA Linkが創業当初から大切にしているのは”働くことでつながる”という考え方です。

国際交流イベントも大切ですが、その場限りで終わってしまうことも少なくありません。一方で”一緒に働く”という関係は、より深く、長く続いていきます。

同じ会社で働き、同じ目標に向かい、同じ責任を担う。その中で生まれる関係は、単なる交流とは違うものです。

そしてその関係が続いていく中で”外国人なのによく頑張っている”ではなく”この人だから信頼できる”という評価に変わっていきます。

国籍ではなく、その人自身が見られるようになる。私はその変化が、とても大きな意味を持つと感じています。


「メーカー就職2027」より
2026年3月

 

さまざまな国の人が一緒に働くことで、少しずつ心の国境がなくなっていく。
企業の中から始まったそのつながりが、やがて社会全体へと広がっていく。
そんな未来を、これからもつくっていきたいと思っています。

 

小野朋江

音楽関係の仕事を経て、1年間フィンランドで生活。言語の壁と格闘した経験から帰国後に日本語教師に。日本語学校や専門学校などで15カ国出身の約800人に指導後、2011年10月に”ASIA Link”を創業。中堅・中小企業との信頼関係を基盤に”人材面から経営を支援する”人材紹介を展開。外国人採用セミナーや留学生向け就職ガイダンスにも多数登壇。

 

関連リンク

ASIA Link:asialink.jp/
スタッフブログ:blog.asialink.jp/
ラジオ「My Eyes Tokyo」出演(2011年12月): 
公開インタビュー記事(2014年10月):myeyestokyo.jp/48851

 

My Eyes Tokyo

Interviews with international people featured on our radio show on ChuoFM 84.0 & website. Useful information for everyday life in Tokyo. 外国人にとって役立つ情報の提供&外国人とのインタビュー