松田笑子さん

インタビュー&構成:徳橋功
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Shoko Matsuda
食材貿易商社 輸出担当マネージャー
(2000年より在米)

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「A+B=C」それが本来の異文化交流。

 

米カリフォルニア州にある、日本やアジア、ヨーロッパ向けの野菜を扱う貿易商社で働いている、松田笑子さんです。7年前にインターンとして現在の会社に入社して以来、アメリカと日本をつなぐ架け橋の役割を果たされてきました。

異文化コミュニケーションの最前線で、いろいろな苦労もあったとのこと。松田さんが日米の狭間で何を見、何を感じ、そして何をつかみ取ったのか? 留学や海外就職をお考えの方は必見、珠玉のメッセージがいっぱいです。

*インタビュー@パレスホテル(大手町)
*英語版はこちらから!

 

「アメリカには、きっと素晴らしい人たちがいるはず

私がアメリカに行こうと思ったきっかけは2つあります。まず1つは、私が12歳か13歳の頃に学校で習った地理の授業です。当時私が学んだのは、アメリカは自国で全てのものがまかなえる唯一の国だということでした。日本は食料、鉱物、石油、天然ガス、果ては人材まで、全てのものを外国に頼らなくてはいけませんよね。でもアメリカは、それらを自国内でまかなうことができる。そういう豊かな国には、きっと素晴らしい人たちがいるはず・・・その時はそう考えたんです。それが本当かどうか、私の考えが合っているのか合ってないのか、それらを確かめたいと思いました。それがアメリカに興味を持った最初のきっかけでした。

もうひとつは、多くの人たちと同じように、英語を学んでみたい、英語を話してみたいという気持ちがあったことでした。

 

村社会

私の会社は、太平洋にほど近いカリフォルニア州サリナス市というところにあります。サリナスは人口15万人、それほど大きくない街です。多くの住民、だいたい人口の60%から70%近くの住民が農業関係で働いています。

ここで働き始めた頃は、サリナスはまるで日本の村のように思えました。 住民はみんな顔見知りだし、同じ環境で一緒に育っています。それでいて、人と人が壁を作っているとも感じました。私が思い描いていたアメリカ人像とは大分違っていました。アメリカ人のイメージって、フレンドリーで、オープンで、お互いに仲が良くて・・・ でもサリナスの人たちは、アメリカ人よりもむしろ日本人に近いと思いました。

アメリカでは、上司でも誰でもファーストネームで呼ぶことが習慣になっていますが、私は長い間それがなかなかできませんでした。今でも、上司には「さん」付けで呼んでますよ。社長の名前はデニスっていうんですが、本当は「ハイ、デニス!」って呼んでもいいところを、私は未だに「ハイ、デニス”さん”!」なんです(笑)

 

「英語よりも大事なこと」って?

話はちょっと変わるんですが、私には兄がいて、すでに3人の子どもがいます。彼は、そのうちの1人でも外国に行かせてあげたいと考えているようです。

私は兄に、いつも言うんです。「それだったら、日本に関する知識を日本語で身に付けることが大事だよ」って。海外に生活する日本人として、日本に関する広くて深い知識が必要になってきますから。

中でも大事なのは、日本の歴史に関する知識です。歴史観の正否は関係なく、過去に日本に何が起きたのかを知る必要があると思います。

知識を身につけたなら、2つ目は意見をまとめることでしょうね。そして3つ目は、自分と意見が違う人とも会話していくこと。自分の意見に賛成してくれる人との会話は簡単ですが、自分の意見と違ったり、自分の意見に反対してくる人と、会話を進めていくことは難しい。そのためにどうすれば良いのかを考えるのは本当に大切なことだと思います。

他の文化や他の地域の人たちと協調していくことこそ、異文化交流ですよね。だから子どもたちには英語を教えることよりも、人と協調して新しいものを生み出していく能力を教えていくことの方が大事だと思います。

そして交流していくためには、自分が持っている知識を人に伝えてシェアすることと、相手の話を聞くことも必要になってきます。そのために、私はリスニングと会話のクラスを学校に設置してほしいなあと思います。それも日本語で。もし自分のお子さんを国際派に育てたいのであれば、こういうクラスはすごく役に立つと思います。

さらに、皆さんが情熱を持って取り組めるものがあれば、なお良いですね。もし自分が好きなことについて誰かが質問して来たら、嬉々として質問に答えるわけじゃないですか。自分の好きなことが話のきっかけになり、そこから関係が生まれてくると思います。

AとBを足し合わせてAになったりABになったりする、もしくは何も生み出さない、というのではなく、「A+B=C」になる、つまり、別々の2つのものを足し合わせると全く新しいものが生まれる、それが本来の異文化交流だと思います。

 

全てに対して腹を立てていた

ちょっと偉そうにいろいろ申し上げてしまいましたが、私も初めから、こういうことを分かっていたわけではありません。異文化に飛び込み、仕事に翻弄されるうちに体得してきたことです。

日本人同士なら、一回電話すればコトがどんどん進んでいきます。情報を正確に伝え合っていくし、こちらの要求以上の仕事をします。もし7の要求をしたら、向こうは10の結果を出してきます。私はそれまで日本以外で仕事をしたことがありませんでしたし、日本で外国人と一緒に働いたこともありませんでした。日本式以外の仕事の進め方があるなんて知らなかったんです。だから今の会社で働き始めた頃は、全てに対して腹を立てていました。

例えば、私がファックスを先方に送っても、彼らは受け取ったという電話もしてこなければ、ファックスでの返事もしてきませんでした。だから私は彼らに電話して、ファックスを受け取ったことを、ファックスで私に伝えてほしい、とお願いしました。彼らは「了解!」と言いました。そこで私の仕事は終わりのはずでした。

ところが、翌朝になってお客様が私に電話して、製品が届いていないと言ってきました。私はそれまでに先方に電話をし、そして彼らが私からのファックスを受け取ったことを確認しているんです。それでも製品は配達されなかったと言うんです。こんなトラブルは日常茶飯事です。そしてこの手のトラブルは今でも起きています。私の英語力が原因のはずがないし、まして私が日本人だから、なんてはずがありません。

でも、これが彼らの仕事の進め方なんです。だから私たちと彼らの違いを修正していくことがすごく大事になってきます。

 

自分の周りを変えるより、自分自身を変えていく方が簡単

ここで出てくるのが、先ほど言った「A+B=C」です。

私はまず、状況を受け入れました。そして彼らのやり方について考えました。「ここに問題の引き金があったんだ」とわかれば、それを彼らに伝えました。「この部分は良い、この部分も問題ない、だけど、この部分は問題になります。何か皆さんにとって良い改善策はありますか?」と。私だけじゃない、会社だけじゃない、お客様だけじゃない、みんなにとって良いやり方はありますか?と聞いていきました。それによって導き出されたのが「C」という解決策です。

自分自身が変わることが、物事を進めていく上で一番簡単な方法だと思います。もし自分以外を変えたいと思ったら、それは一生かかっても難しいですよね。

アメリカの会社で働く人間として、日本のお客様に現在の進捗状況を伝える。そしてもし日本のお客様に何かご不満があれば、会社にその不満の内容を伝える。それゆえにいろいろな場面に直面します。先ほど言ったようなトラブルも起きます。でも同時に日本とアメリカの「架け橋」としての面白さも感じているから、すごくやりがいがありますよ!

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松田さんにとって、アメリカって何ですか?

チャレンジの機会を常に与えてくれる存在です。

日本人という枠を超え、女性という枠を超え、果ては松田笑子という枠を超える、
そのためのチャレンジですね。

そしてアメリカは、精神的にも物理的にも、今もなおフロンティアです。日々楽しんでます!

 

松田さん関連リンク

European Vegetables Specialties Farms Inc : http://radicchio.com
(松田さんがお勤めになっている会社のホームページ。英語のみ)

 

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