大塚玲奈さん & エコトワザ

インタビュー:徳橋功 & 中村優
構成:徳橋功
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Reina Otsuka
CEO

この先に未来があるとすれば、事業を大きくできるかもしれない。その可能性に賭けたいと思いました。

 

今回は”日本のエコ”の伝道師、株式会社エコトワザ代表取締役の大塚玲奈さんをご紹介します。

エコトワザの仕事を一言で表すなら「日本の豊かな自然が育んできたライフスタイルと、自然と寄り添いながら生み出されてきたモノを、海外に発信すること」でしょう。雑誌やウェブ、そしてオンラインショップを通じて “グリーンな暮らし”を世界中に提案しています。

笑顔が素敵なこの女性、優しそうだな、だからエコの道に進んだのかな・・・ いえ、実はかなりの体育会系。会社員時代はバリバリの営業ウーマンで、組織を立ち上げるのが好きなタイプ(大塚さん談)。そんな大塚さんが環境問題を自身の生涯を通して取り組むべき仕事として選び、また「エコで日本と世界を結ぶ」活動を一人で始めた最初のきっかけは、幼少期の体験でした。

*インタビュー@エコトワザ (渋谷区千駄ヶ谷)

英語版はこちらから!

 

 

 

幼少の頃の思い

日本はとても美しい国だと思います。森もきれいだし、広葉樹林も本当にきれいです。四季もありますし、水源にも恵まれています。

でもそれらの美しさを海外に伝えている人は、そう多くないと思います。とりわけ環境問題に関することとなると、その人数は非常に限られてしまいます。私は環境問題に人生を賭けて取り組みたいと思っていますし、そのために私の強み – 語学力や、様々なバックグラウンドを持つ人たちとコミュニケーションを取る力 – を最大限に活用したい。だから私は「エコトワザ」を通じて、日本のエコなライフスタイルと、豊かな自然環境によって育まれた素晴らしいモノを、世界中に伝える事業に取り組んでいるのです。

ただ、一口に環境問題と言ってもその切り口は様々です。メーカーや地域、団体によってアプローチしている問題が異なり、それらが日本中に点在しています。それらを体系化し、自分たちの解説を加えて伝えていくことが、私たち「エコトワザ」のミッションです。

環境問題には、小学生の頃から関心を持っていました。私は、ニューヨークで2歳〜10歳の幼児期を過ごし、帰国後、小児喘息になりました。また、当時起こっていた湾岸戦争の報道に触れ「人間の行動が地球に多大な負荷をかけている」と感じたことも、環境問題に関心を持ったきっかけです。

そして中学生の頃に「将来は環境問題を解決する仕事をしたい」と思い始めました。環境が単に経済的なリソースとして見られている限り、いつまで経っても環境問題など解決できるはずがない。解決するためには、自然環境の中に人間や社会、経済が存在するということを認識する必要があるのではないか、と考えていました。「そういう理念のもとに行動を起こす会社が無いのなら、私が作ろう!」と思い立ったのです。もともと組織づくりに興味や意欲があったことも、起業を考えたひとつの要因だったのだろうと思います。高校時代に劇団を作ったり、大学時代に環境サークルを立ち上げたりしていましたから。

 

「私はアメリカ人」

父の仕事の関係で、幼い頃に渡米したので、日本は”外国”でした。話に聞く日本はすごく素敵な国なのだろうという印象を持っていました。しかしいざ帰国すると、住まいが東京という都市圏だったこともあって、喘息にかかってしまった。それまで抱いていたイメージとのギャップから「何て汚い国なんだろう!」と、一時は日本を嫌いになりました。帰国子女特有の “アイデンティティ・クライシス”だったのかもしれません。当時は「私はアメリカ人。この国の人とはちょっと違う」とも思っているところがありました。

それから時が経ち、大学3年生の時に再びアメリカに渡ります。 カリフォルニア大学バークレー校に9カ月間の交換留学をする機会を得たのです。世界各国から学生が集まる大学ですから、当然学生同士での会話は「どこから来たの?」から始まります。そこで私は「日本から」と答えるのですが、「でも育ったのはアメリカ」と、あえて自分で付け足していたのです。

ある日、その注釈を外してみました。それでも周りからは難なく受け入れられた。「ああ、これで良かったのだ」と思いました。日本で生まれて、 両親も日本人。日本の文化の影響も強く受けているのだから、それを恥ずかしがること無く、素直に「自分は日本から来た」と伝えればいいんじゃないか、と思い始めたのです。それが私の「日本を海外に伝える」初めての体験でした。

アメリカでの生活や、様々な国へ旅行するうちに、海外から日本を客観的に見ることができました。そして日本には素晴らしい物がたくさんあることを実感しました。でもそれらの存在が外からは見えにくいところに隠れていたり、きちんと伝えられていない場合も多く、なかなか広くは知られない。ならば私が架け橋になりたいと思いました。

この思いも、さかのぼると小学生時代の文集にたどり着くのかもしれません。私はそこに 「将来は外交官になりたい」と書きました。昔からそのような素地はあったのだと思います。

 

「波」が来た!

「エコトワザ」は、新卒入社したリクルートに在籍当時の2006年7月に設立しました。実質的な意味で会社が始動したのは、それからちょうど1年後の2007年7月です。会社で働きながらの二足のわらじは難しく、1年目は秋にイベントを開催したことが主な活動となりました。「このまま両方続けるのだろうか?」と思っていた矢先、2007年3月のある土曜日に、アル・ゴアの「不都合な真実」を見ました。

私は映画そのものよりも、むしろ観客の反応に心動かされました。私が高校生の頃は「環境問題はボランティアとして取り組むものだ」「環境と経済は切り離して考えるべきだ」というのが世の潮流でした。しかしその時の観客は「環境と経済は両立すべきだ」というアル・ゴアの呼びかけに誰もが共感していたのです。

「私の思っていることを実現させるなら今しかない」。そう思い、週明けに上司に辞意を伝えました。もともとリクルートに入社する前から「3年前後で辞めて起業したい」という話はしていましたし、上司も「経営者になりたいのなら、こういう仕事をしなさい」と勧めてくれるほどの恵まれた環境ではありましたが、この時も思いのほかすんなりと受け入れてもらうことができました。

その以前にも何度か辞めたいと相談したことはありましたが、そのたびに「まだその時期ではないだろう」あるいは「この会社で何を成し遂げたと言うんだ?」と説得され、とどまりました。でも『不都合な真実』を見た後、自分の中にある覚悟が肚に落ちたのだと思います。それが周囲にも伝わり、この時は誰からも引きとめられなかったのだと思います。

すでに起業していた同期の男性からは「 “波” が来るのを待った方がいい。 何かを始めるべき時が来たら、勝手に物事は進んでいくから」と言われていましたが、その波がまさに今来たのだと思い、独立しました。一人での船出でした。

 

仕事量は無限, 可能性も無限

私にビジネスパーソンのイロハを叩き込んでくれたリクルートは「100%じゃない、120%の力を出して仕事に臨め!」という会社でしたし、住宅情報誌の広告営業で不動産会社を回る毎日でした。今は不動産広告のようなハードなものを扱っているわけではありませんが、仕事への姿勢は変わっていません。環境問題は時間との闘いですから、仮に毎日寝ずに仕事をしても足りないくらい、取り組むべきことは無限にあります。

小さい会社を立ち上げて一からスタートするより、大企業のCSR(Corporate Social Responsibility 企業の社会的責任)部門に提案して取り組んだ方が、動かせる金額も人員も、社会へのインパクトも段違いに大きいかもしれません。実際にリクルートの役員の方々とも、そのようなお話はしました。それでも、この先まだ何十年と未来があるとすれば、初めは事業規模も組織も小さな会社であっても、できることが今後あらゆる方向に広がる可能性が起業にはあると感じました。その大きな可能性の方に賭けたいと思いました。

 

道に迷う

私たちの活動を支援してくれるコア層は、同じ30代ですが、他の年齢層の方々にも広く支援していただいています。取引のあるメーカー、企業の経営者や担当者の方は私よりも年上で経験豊富な方々が多いのですが、大先輩でありながら私たちと正面から向き合ってお話して下さいます。嬉しさを噛みしめる瞬間です。

今でこそ、ありがたいことに少しずつそのような繋がりができてきましたが、もちろんそうなるまでには時間がかかりました。私たちの原点は雑誌制作ですが、それも出版から営業まで全て自分たちの手で行ない、書店を1軒1軒回って、販路を少しずつ拡大していきました。

雑誌は制作にたくさんの手間がかかりますが、載せられる情報量はウェブよりはるかに少ない。それでも雑誌にこだわったのは、私たちの思いや覚悟を示すには、実際に手に取って読める「モノ」を提供することが必要だと思ったからです。「私たちはこれを作っています」ときちんと言えるものを作りたいという思いがありました。

最初の1年間は、試行錯誤の連続でした。雑誌の売り上げが多くは見込めない中、環境系のマーケティングや家具のレンタルなどのサービス展開を試みました。会社を存続させなくてはと思うあまり、経験も無ければ強みでもなく、思いがそれほど強く無いものをビジネスにしようとしてしまった。「これではいけない!日本のエコと技を世界に伝えたいと思って会社を辞めたはずなのに」と、原点を見つめ直しました。

例えば家具レンタルでは、輸送費を節約するために自分たちでテーブルを担いで電車で埼玉から都内に運んだりといったこともあります。いま振り返ってみれば、そうして試行錯誤する経験も、若い私たちには必要だったのだろうと思います.


バイリンガル雑誌「eco+waza」(季刊)
購入

 

取引先と真剣に対峙

会社立ち上げ当時は、ビジネスプランはありました。でも、そうそう上手くいくものではありません。20代半ばの女性が一人で環境関連の展示会に行って「御社の商品を弊社で扱わせて下さい。英語で世界中に紹介します」と言ったところで、当然メーカー側からも相手にされず、届ける先も全く無い。「鶏が先か、卵が先か」という言葉がありますが、そのどちらも私たちには無かったんです。そこで、別のサービスを考えるという方向に行きかけたわけです。

それから一度リセットして、改めてメーカーの方々と向き合うことにしました。「私たちに御社の商品を扱わせて下さい。私たちは真剣なんです」。大田区にある町工場にも行きました。

そんな時、雑誌がついに効力を発揮しました。「こういうふうに掲載しますから」とお伝えしていた会社から、返事がありました。2008年の暮れ、 山陽製紙さんという、梅の種で作った炭を漉き込んだ紙を作る会社でした。ちょうど海外展開を考えていらした時期でもあり、私たちをパートナーにしたいと考えて下さったのです。

それからご紹介などを通じて取引先も徐々に増え、商品を購入して下さるお客様も増えていきました。今、私たちは約80の企業と提携、お客様はオーストラリアやイギリスなど英語圏やヨーロッパ諸国、他にシンガポールや香港、韓国などの方にご購入いただいています。

 

 

「考える人」を増やす

ウェブサイトは雑誌に遅れること約1年、2009年に立ち上げました。当時は英語版のみでした。雑誌が英語と日本語のバイリンガルなので、読者には日本在住の駐在員の方が多くいらっしゃいます。そのような方々から、本国に帰る時に「自分の国でも見たい」「故郷の友達に見せたい」だから英語のサイトを作ってほしい、という要望をお受けすることが増えたことがきっかけになりました。

日本語版は、2011年9月26日にオープンしました。多くの方から「日本人も知りたい内容だから、日本語でも展開してほしい」との声をいただいたこと、そして震災を境に、日本という国についていろいろ考え直したことも契機となりました。自然と寄り添う知恵を培ってきた先人たち、公害を乗り越えた上の世代の方々が作ってきた歴史・・・これらを私たちはあまりにも知らなさ過ぎる。「日本の人が一番知っているべきなのに、知らないことが信じられないほど多い」と思いました。海外に日本の素晴らしいものを伝えることはもちろん続けていきますが、「国内の、私たちのもっとも身近で心強い仲間になってくれるであろう方々にもきちんと伝えよう」と思い、日本語版サイトを立ち上げました。

 

私たちがご紹介しているものには、伝統工芸と呼ばれるものもあれば新しい技術を活用したものもあります。古いものと新しいものの良さを活かし、そして私たちが紹介したモノを実際に使って下さる方や、一歩踏み込んでモノのより良い使い方を一緒になって考えてくれる方、「名前に””が付いているから買おう」ではなく「どうしてこれは環境に良いのだろう」「メーカーはどういう努力をしているのだろう」「私は何が出来るだろう」・・・そのように自分自身の問題として環境問題を捉え、考えてくださる方を増やすことに、今一番力を入れています。サイトでは会員制度を設けていますが、今後会員様がより積極的に環境問題と関わっていくための仕掛けを充実させていきたいと考えています。

 

日本を世界からヒトを引き寄せる国に

ゆくゆくは、日本を世界のリサーチセンターにしたいという構想があります。以前から「日本がこの先取るべき道はインバウンド(海外から人を自国に誘致すること)だ」と考えていましたし、日本には豊かな自然環境もまだまだ残っています。公害を乗り越えたという生きた歴史もたくさんあります。そういうところに海外から訪れた人を案内し、学んでいただけるような場所にしたいと思っているんです。将来は、海外で地球規模のサステナビリティ(持続可能性)を研究しているような専門家と協業していきたいと考えています。

最初はごく小さい船出でしたが、海外での会議などにお招きいただく機会もあり、世界中につながりが増えてきました。今でも日々の活動は地道に一歩一歩進んでいるような状況ですが、想像力には制限をかけずに、未来を描いていたいと思っています。


私たちのラジオにご出演いただきました。
2011年10月5日@ 中央FM 84.0

 

大塚さんの理想とする世界って何ですか?

「減らす」「取りすぎない」これらを皆さんが納得してくれている世界でしょうか。

今私たちは、地球が自然にコントロールできないほどに多くの物を排出し、奪ってしまっています。その仕組みを変える必要があると思います。例えば、エネルギー問題であればCDM (クリーン開発メカニズム) だけで対処できる問題ではなく、ライフスタイルから変えなくてはならないでしょう。いくら技術革新によって自然エネルギーが実用段階になっているとしても、それを使う量が増えてしまっては意味がないからです。

“成長” あるいは “拡大” がベストだと思われがちですが、世の中に流れているエネルギーはいつの時代も同じなはずです。 エルンスト・フリードリヒ・シューマッハー の「成長の反対語は、停滞ではなく”維持”である」という言葉にあるように、減らすことは失うことではなく、次のステップに進むために必要なことなのだと思います。先進国は失うことを恐れずに、生活スタイルを少し変えてこれまでとは違う豊かさを追求した方が良いかな、と思います。

日本は今、消費社会の悪の権化の一つのように見なされていますが、元々日本が持つ精神性から、取り立てて意識されないような生活の些事まで、良いものがたくさんあります。

だから、日本にはモノではなく“生き方”や“ライフスタイル”の面で先進国になってほしい。その進路を私たち「エコトワザ」が示せたらいいな、と思います。

 

大塚さん関連リンク

Ecotwaza website (英語): http://greenjapan.com/
エコトワザHP(日本語): http://ecotwaza.com/
eco+waza Online shop (English): http://www.shop-greenjapan.com/
モノがたりショップ(日本語): http://ecotwaza.com/onlineshop/

大塚さん on the radio! Part1 Part2

 

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