ジョン・マシューズさん(アメリカ)

インタビュー:徳橋功
構成:多田友美・徳橋功
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John Matthews
ラジオキャスター & レポーター
(2006年から日本在住)

 

僕たちは声だけで

世界を表現しているんです。

 

ジョン・マシューズさん – 普段はジャーナリストとして、 NPR(National Public Radio ナショナル・パブリック・)というアメリカの公共ラジオ局を通じて日本のニュースを報道しています。

「声には不思議な力がある。声は人の想像力を掻き立てる」という彼の言葉からは、NPR向けの東京からのレポート、そして『The Japan Show』という彼自身のポッドキャスト(オーストラリア出身のCo-hostと日本で起こった出来事について毎週あれこれ語り合う番組)をこよなく愛しているのがひしひしと伝わってきます。ジョンさんが三度の飯より好きなのはラジオ。彼のインタビューから見えてきたのは、ジョンさんが心から自分の仕事を楽しんでいる、ということでした。まさにライフワークと言える彼の仕事ぶり、ここで是非感じて下さい!→ http://japanshowpodcast.co.cc/ !

*インタビュー@ 四谷(東京都新宿区)
*日本語訳:多田友美
*こちらをクリック→METラジオでの彼の美声が聴けます!

英語版はこちらから!  

 

聞き覚えのあるあの「声」

ラジオの現場で働けて最高です。ラジオって本当に楽しいんです。日本で起こった出来事について僕がまとめたニュースがアメリカで報道されるわけですから。毎日何百万人という人が僕のレポートを耳にしていることになると思います。

僕は NPRという、アメリカ最大のラジオ局でニュースを報道しています。僕が小さい頃、祖母がNPRの大ファンでした。だから僕にとってNPRは小さい時から身近な存在でした。

あの 3月11日の大震災の後、僕はNPRや他の報道機関などで通訳として働き始めました。僕は日本のニュースをアメリカのラジオで報道していますが、実際僕が誰なのか、みんなよく知らないはずです。もし誰かに僕のことを聞いたとしても、誰も僕のことを知らないでしょう。でも確かに声は聞いたことがある。それってすごいことだと思うんです。

この前なんて、ずっと連絡を取っていなかった友達がメールをくれたんですよ!「もしかしてNPRでニュース読んでる?」って。僕がニュース報道の一番終わりに「ジョン・マシューズが東京からお送りしました」って言うのを、偶然聞いていたんです。そして、その中の一人が実際に連絡をくれたんですね。これはすごいぞ、と思いました。途切れていた友情が、また復活したんですから。  

 

声のパワー

声って、セクシーだと思うんです。理由はわからないけれど、僕は声に魅力を感じます。僕が思うに、ラジオは新聞や文字を使った媒体よりもはるかに特別なもの。もっと言うと、ビデオやテレビよりもさらに魅力的だと思います。なぜなら声だけを聞いたとき、僕たちの想像力はより刺激されるからです。

親が子どもを寝かせる時、おとぎ話を読んだりしますよね。そんな時、お母さんは挿絵を見せてあげたり、お話を読んであげたりしますよね。おとぎ話を読むその声はその子をゆっくり眠りへと誘う。その母親の声、ここに声のパワーがあるんです。

だからラジオの場合は、声だけでリスナーの信頼を得ることが鍵になってきます。友達と話すときのように早くしゃべりすぎてはいけないし、情報を詰め込みすぎてもいけない。ラジオは、いかに簡潔な言葉でリスナーにインパクトを残すかが命なんです。

映像の世界では、画面の中にいるのは一人ではなく、たくさんの人が出てきます。そして、たくさんの物事が展開します。だから一つの物だけにフォーカスするのは難しい。一方でラジオの場合は、 通常は一人の – 言うなれば専任の – ラジオキャスターが番組を担当し、リスナーに語りかけます。例えばラリー・キング(CNNのキャスターであり『ラリー・キング・ライブ』の元司会者)。僕が一番身近に感じているのはなんといっても彼の声。重要なのは、要するに声なんです。  

 

僕のライフワーク

僕は『The Japan Show』というポッドキャストもやっています。これはNPRとは全然関係がありません。オーストラリア出身のギャビン・ディクソンという人と一緒に、ライフワークとしてやっているんです。

これがほんとに楽しくてしょうがない。何が楽しいかって、毎週いろいろなことをテーマにあれやこれやとディープにディスカッションができるところです。もちろんNPRでの報道もとっても楽しんでやっているのですが、こっちのポッドキャストの方が楽しくてワクワクすることも多いんです。

さっきも言ったように、僕は40秒とか45秒に短くまとめられたニュースを、全米に向けて配信します。すごい事だとは思いますが、実際のところ、NPRではディスカッションが出来ません。僕はニュースをそのまま読み上げます。この場合僕は”語り手”に徹しているわけです。

でも僕が『The Japan Show』で楽しみにしているのは、ディスカッションでいろいろな出来事についてあれこれ話し合うことなんです。意見を出し合って、あれこれ話し合って、それでリスナーを増やしていく。一方でニュースの報道はというと、もしかしたら僕が読んでも誰が読んでも同じかもしれません。でも、ディスカッションは違う。ディスカッションというのは、誰かがこう考えるからこう言う、僕がこう考えるからこう言う、あなたの観点、目の付け所はこういうところが面白いね・・・

『The Japan Show』では僕たちは自分たちがやりたいことをできるんです。これでお金をもらっている訳ではなくて、ただ自分たちのためにやっていますから。そして僕たちはめちゃくちゃ楽しんでる。これが『The Japan Show』でのやりがいです。

 

震災がもたらしてくれたもの

実は、あの3月11日に起こった大震災の前、僕は日本を離れてどこかほかの国で暮らそうかと考えていたんです。でもあの震災の後、日本を離れようなんて思わなくなりました。それどころかあの震災は、僕をここに留まらせてくれたんです。 僕はあの震災で、地域やみんなとのつながりを感じることが出来た気がします。

元々日本に興味を持ったきっかけというのは、『将軍』(イギリス人作家ジェームズ・クラベルの小説。1980年にアメリカでドラマ化された)という本を読んだことでした。この本は 徳川家康 が天下をとるちょっと前の出来事を基にした歴史小説で、結構なボリュームの本でした。でもこの本で日本をすごくかっこいい国だと思ったんです。日本って最高、日本の歴史って最高!という感じで、日本に夢中になってしまいました。だからすっごく日本に来たかったんです。

僕はアメリカの高校で2年間日本語を勉強しました。その後、僕の高校の姉妹校である玉川学園(東京都町田市)という学校の交換留学生として選ばれました。

これが僕にとっての初めて日本でした。交換留学を終了し、僕はアメリカへ帰国したのですが、「いつかまた日本に行きたい」といつも思っていて、そのタイミングをずっと狙っていました。

そして今、僕は日本にいます。時間はだいぶかかったけど、僕はラッキーだと思います。だって僕にとっての魅惑の国である日本をベースにして、ラジオの世界でキャリアを積むことが出来ているんですから。

あの大震災にはとても心が痛みます。しかしその一方で、あの震災を機に僕はラジオの世界でプロとして知られるようになりました。そして自分が本当に大好きなことを見つけることが出来たのです。あの震災が、NPRで働くきっかけとなりました。そしてあの震災が、僕のキャリアのターニングポイントになりました。僕はNPRで通訳として働き始め、続いて他のメディアでも働くこととなりました。

さらに僕は日本人ではないにも関わらず、この震災の経験を日本の人たちと一緒に分かち合うことができました。少なくとも僕はそう思っています。そして日本は、もはや自分の国のようにすら感じます。 誤解を恐れずに言えば、あの大震災が僕を日本に迎え入れてくれたんです。  

 

もし何でもできるなら・・・

『The Japan Show』を日本のラジオのレギュラー番組か、もしくは『Time Out Tokyo』(地域の通による、都市生活者のためのライフスタイルマガジン)に並ぶ有名な情報ツールにしたいですね。それが僕のゴールかな。

それから、常勤で日本のラジオの特派員になれたらな、と思います。僕は自分のやりたいことをやる、つまりラジオでレポートをやりたい。後は『The Japan Show』を一緒にやっているギャビン・ディクソンと一緒に、NHKワールドで仕事をしてみたいですね。我々は、もはやチームみたいなものですから、一緒でなくては意味が無いんです。

今のところ、ラジオの仕事を楽しくやっています。だからもし僕が何でも好きなことをやれるとしたら・・・それでも間違いなくラジオを選びます。僕はラジオ命ですから!


アイリーンさんやマヤさんの代打をつとめてくれました。
2011年8月6日@中央FM 84.0  

 

ジョンさんにとって、ラジオって何ですか?

私たちが世の中で起きていることを見るための手段であり、現実世界を映し出す窓です。だけどそれは完全に透明というわけではありません。

ラジオからの情報は、必然的に限られています。絵を描いているところを想像してみてください。ラジオが描く絵は、完全ではありません。声だけでは「芝生は緑で、空は青くて・・・」なんて伝えきれませんからね。

だから、リスナーが僕たちの声を聞きながら想像を広げていく。そうして彼らの頭の中で自由に絵が描かれていく。僕は、ラジオってそういうものだと思っているんです。僕はラジオで放送されているネタが他の何よりもかっこいいと思います。ちょっと下品で、ちょっと陳腐。そういうところが最高なんです。

ラジオは物語です。そして物語の語り部です。ニュースも歴史も、ラジオにかかればみんな物語になってしまう。僕たちは声だけで世界を表現しているんです。これが僕にとってのラジオですね。

 

ジョンさんにとって東京って何ですか?

アイデンティティーがない街だと思います。

東京らしい考え方や, ライフスタイルなどはもちろんあると思います。でも僕はこの街を「都市」と呼ぶにはあまりにも断片的すぎると思うんです。逆にニューヨークはと言えば、ハーレム、クィーンズ、マンハッタン、ウォールストリート・・・僕たちはニューヨークに対してはっきりとしたイメージを持っていますよね。だけど「東京」って聞いた時にみんながイメージすることって「人が多い」とか「混んでいる」とかだと思うんです。

東京の街そのものが、自分がどんな街か分かっていない。僕はそんな風に感じます。「こんにちは、私が東京です」って言ってくるくらいのアイデンティティーが、この街には感じられません。もちろんそれぞれのエリアにはそれぞれのアイデンティティーが存在します。でも東京全体で見たとき、東京という街にしっかりとしたアイデンティティーがあるように感じないんです。もしかしたら東京が巨大な街だからなのかもしれませんが・・・

でも僕は東京での生活を楽しんでいます。友達もたくさんできました。何人かは離れ離れになってしまったけれど、彼らは僕の人生に大きな影響を与えてくれました。結局どこで暮らすかなんて、それほど重要ではないということに気づきました。この街だけに限らずどこにいたって、そういった素晴らしい人たちが周りにいる限り、僕たちは素晴らしい時間を過ごすことができる。そして最高の人生を送ることができる。そう思います。

これが、僕にとっての東京です。

 

ジョンさん関連リンク

The Japan Show Podcast:http://japanshowpodcast.Co.CC/
*Facebookページ: こちら
☆ジョンさんとラジオしました!(2011年8月6日)クリック!  

 

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