My Eyes 米大統領選2016 ⑥ 民主党 第1回討論会

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コラムニスト/翻訳家  

 

皆さんこんにちは! すでに共和党では、大統領選に向けて2回の討論会が行われている中、もう一方の大統領選の雄である民主党が、10月13日にラスベガスで第1回討論会を行いました。きっと皆さんなら、世論調査でトップを走るバーニー・サンダース氏とヒラリー・クリントン氏の一番勝負がどのように繰り広げられたか、ご興味あると思います。今回はそのもようも交えてお伝えしたいと思います。

討論会には5人の民主党候補者が参戦しました。サンダース氏やクリントン氏に加え、元バージニア州上院議員のジム・ウェッブ氏、ボルチモア市長やメリーランド州知事を務めた経歴を誇るマーティン・オマリー氏、元ロードアイランド州知事のリンカーン・チェイフィー氏です。

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左からサンダース氏、クリントン氏、ウェッブ氏、マーティン氏、チェイフィー氏 *Photos from Wikipedia

近年批評家の間では、民主党は以前にもまして左旋回して社会主義政党的になり、増税や同性婚支持などの法案に賛同し、それらに反対する人々の意見に耳を貸さないという意見が交わされていました。さらに石炭工場閉鎖など、一部では不要ともささやかれた環境政策も打ち出していました。

そのような経緯がありつつも、メディケアメディケイドといった単一支払者医療制度の維持に向けた原資確保のための増税、公立大学の授業料無料化などを掲げるサンダーズ氏は今回の大統領選で支持を獲得しました。

一方、クリントン氏はメール問題の泥沼にはまりました。何千ものメールが氏の国務長官在任中に消えた事件に多くの民主党支持者がうんざりしたため、氏に代わる候補を求めていました。このような背景から、多くの人々がサンダース氏に関心を寄せ、今回の討論会に大きな期待や熱気が沸き起こりました。

会を主催したCNN(「クリントン・ニュース・ネットワーク」などと揶揄されることもあります)について観測筋は、クリントン氏に対して優しすぎたのではないかと感じています。なぜならクリントン氏が国務長官だった2012年に起きた「ベンガジ事件」(アメリカ駐リビア大使や4人のアメリカ人が殺害された。この時、米政府からの救助は無かったという)や、米軍のリビアや「アラブの春」、シリア、中東諸国への介入については一切質問が飛んでこなかったからです。

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デヴィッド・ペトレイアス氏 *Photo from Wikipedia

それに加え、米陸軍司令官を務めた後にCIA長官に就任したデヴィッド・ペトレイアス氏などによる情報漏洩事件では、クリントン氏よりも少ないメール数、またはわずか1通のメールで逮捕・起訴されたケースがあったということ[1] についても、討論会ではほとんど触れられませんでした。サンダース氏はその件について、どうでも良いという感じで「アメリカ市民はクリントン氏のメール事件について聞き飽きている」と言いました。

しかし候補者の一人であるチェイフィー氏はクリントン氏に、かつて氏が拒否した事件への説明を行うよう求めました。このチェイフィー氏の行動が、会場にいる民主党支持者たち – 盲目的にクリントン氏を支持している – から拍手喝采を受けました。さて、これが会の後に行われた調査にどのように影響したでしょうか?

ドラッジレポート(保守系メディア)による調査とタイム誌による調査では、サンダース氏が意外にも圧勝し、 ジム・ウェッブ氏が2位につきました[2]。ちなみにウェッブ氏はベトナム戦争の退役軍人で「パープルハート」と呼ばれる名誉負傷章を授受、レーガン政権では海軍長官を務めました。つまりウェッブ氏は元来共和党員で、後に民主党員に転向したのです。その原因は、氏の反戦思想でした。

しかし討論会の観客の4分の1、すなわちウェッブ氏の支持者たちは、氏が憲法修正第2条(「規律ある民兵は自由な国家の安全保障にとって必要であるから、国民が武器を保持する権利は侵してはならない」)やアメリカ市民の自らを護る権利に賛意を示していることを知りました。「政府高官のように24時間の警護を受けることが、一般市民にはできないから」というのがその理由です。また、黒人が警察から不当に扱われる事件が続くことで起きた「黒人の生命は大切だ(Black Lives Matter)」運動に関する質問に対して、ウェッブ氏は「全ての人の生命が大切だ」と言いました[3]。批評家は「この運動は警官に対する暴動を煽るものであり、それにより亡くなった警官もいる」と言いました。

この討論会の後、10月20日にウェッブ氏は大統領選からの撤退を正式表明しました。ただし無所属や第三党の独立系として大統領を目指すかについては、当面検討を続けるということです。

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ジョー・バイデン氏 *Photo from Wikipedia

また現副大統領であるジョー・バイデン氏の、民主党候補者指名争いへの立候補が注目されていましたが、10月22日に断念の意を表明しました。 ますます混迷を深める民主党指名争い、目が離せませんね。

では、また次回お会いしましょう!

[1] https://en.wikipedia.org/wiki/Petraeus_scandal(英語)
[2] http://patriotupdate.com/shock-poll-heres-who-won-the-first-democratic-debate/(英語)
http://time.com/4071956/democratic-debate-hillary-clinton-bernie-sanders-poll-who-won/(英語)
[3] https://en.wikipedia.org/wiki/Black_Lives_Matter (英語)  

 

MET編集部より

コラム著者のダニエル・ペンソさんおすすめクリップ。 メディア同士がリングで戦ったらどうなるか?米保守系メディアの「FOX NEWS」と、護憲派で共和党にも民主党にも批判の矢を浴びせる新進気鋭メディア「infowars」の一戦です(笑)

 

 

ダニエル・ペンソ

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米オレゴン州在住の日英翻訳家。1999年〜2009年の約10年間住んでいた東京を”第2の故郷”と呼ぶ。趣味は旅行、語学、。日本への旅行時には落語を楽しむ。
*ダニエル氏の詳細は以下のページをご覧下さい。 
日本語版 英語・日本語版

 

*日本語訳:徳橋 功  

 

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