My Eyes 米大統領選2016 ㉔ 冷戦再び?

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ダニエル・ペンソ
コラムニスト/翻訳家  

 

9月末と10月初めに行われた、共和党・民主党各指名候補者のテレビ討論会。民主党候補者のヒラリー・クリントン氏が優勢と見る向きもある中、クリントン氏敗北の可能性を示すものが出てきました。かつての冷戦にも匹敵する戦争を引き起こす、その火種を民主党が抱えていると、アメリカの保守系メディアが指摘しているのです。ウィキリークスが民主党メールをリークして以来、クリントン氏とその支持者たちがロシアを非難しました。しかし実際は、誰が真にメールのハッキングに関わったのか明らかになっていません。民主党の内部関係者がメールを暴露し、セス・リッチという民主党職員が、ウィキリークスの情報によると、民主党党大会の直前に殺害されました [1]。

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FOX Newsより

過去を遡ると、共和党候補者のドナルド・トランプ氏はロシア大統領のウラジミール・プーチン氏の強力なリーダーシップを絶賛し、トランプ氏が大統領に当選した暁には、米露は良好な関係を築くことができると言いました。またトランプ氏は、米露が一致協力してISIS打倒を目指すことを示唆しました。これらの発言は共和党の他の候補者(中でもジョン・ケーシック氏は「偉大なる独裁政治を取り戻そう、トランプやプーチンと共に立ち上がろう!」と皮肉るコマーシャルを製作)、そして今ではクリントン氏からの非難を浴びました [2]。クリントン氏については、ラジオ番組司会者のアレックス・ジョーンズ氏など右派の人物と共にロシアの工作員と化していると糾弾しました。

アメリカとロシアの間には、冷戦期の衝突の歴史があります。それはロシアがソ連と呼ばれ、資本主義一辺倒だったアメリカとは反対に共産主義が国を主導していた時代です。レーガン政権時代が幕を閉じた後、ソ連は崩壊し、ベルリンの壁も崩れ、冷戦は終わりました。アメリカによる一極支配時代が到来し、ロシアはボリス・エリツィン氏やドミトリー・メドベージェフ氏、プーチン氏と共に自国の没落に耐え抜き、もがきながら民主主義と資本主義を導入していきました。

ロシアの民主主義の本質には議論の余地があります。ロシアはウクライナを侵略し、クリミア半島を占領。ジョージアやチェチェンと紛争を繰り広げる一方、周辺諸国を取り込もうとしています。確かなことは、ロシアは冷戦期に積極的に関与したような世界規模の紛争からは手を引いたということです。一方でアメリカは、世界中で起きている紛争に、今も絶え間なく積極的に介入しています。

全世界が注目する最大の紛争は、シリアで行われているものであることに、疑いの余地はありません。ロシアは冷戦期からシリアを支持しており、ISIS打倒に向けてシリアのアサド大統領からロシア軍基地を作るよう要請があったほどです。一方でアメリカは、ISIS と戦っていると主張するもシリアからの同様の要請はありませんでした。アメリカがISISを支援しているという、シリア政府筋の情報もあります [3]。その上、シリア上空の飛行禁止区域を通過しないようアメリカが全ての国に要請し、その中にはロシアやシリアも含まれていると言われています。もしアメリカが実際に飛行禁止区域を設定したとしたら、それはロシアとの直接対決につながります。なぜならそれは、アサド政権を支援するために軍用機をシリア上空に飛ばしているロシアへの挑戦だからです。これが“第三次世界大戦”の始まりになるのではないか、と恐れられています [4]。

 

[1] forward.com/news/national/347859/grieving-dad-says-seth-rich-scored-dream-job-with-clinton-campaign-days-bef/

[2] www.rawstory.com/2015/12/make-tyranny-great-again-ohio-gov-kasich-trolls-trump-with-hilarious-trumpputin-2016-parody-website/

[3] www.veteranstoday.com/2016/09/22/assad-is-right-us-air-force-supporting-isis-attacks-in-syria-iraq-as-well/

[4] www.globalresearch.ca/us-pushes-for-no-fly-zone-as-syrian-conflict-escalates/5547385

 

ダニエル・ペンソ

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米オレゴン州在住の日英翻訳家。1999年〜2009年の約10年間住んでいた東京を”第2の故郷”と呼ぶ。趣味は旅行、語学、食。日本への旅行時には落語を楽しむ。
*ダニエル氏の詳細は以下のページをご覧下さい。 
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*ダニエル氏の意見は、My Eyes Tokyoとは関係ありません。

 

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