My Eyes 米大統領選2016 ㉗ トランプ氏、勝利 Part1


コラムニスト/翻訳家  

 

ビジネス界の成功者で、これまでに政治経験ゼロだったドナルド・トランプ氏が、辛くも勝利を手にしました。ちょうど共和党のミット・ロムニー氏が2012年の大統領選で勝った州を全て取り、さらにフロリダ、ペンシルバニア、ミシガン、ウィスコンシンで勝利しました。中でもペンシルバニア、ミシガン、ウィスコンシンは、ロナルド・レーガン氏以来どの共和党候補も勝利を逃してきた州でした。ペンシルバニアはミシガン同様、1988年の大統領選以来共和党には票を投じず、ウィスコンシンに至っては1984年からずっと共和党が敗北を喫してきました。

 

トランプ氏勝利の背景

トランプ氏勝利の鍵となったのは、少なくとも2つの要因が考えられます。それは「貿易」と「不法移民」の問題です。例えばミシガン州は、日本ではデトロイトが有名ですが、この街はかつてアメリカの自動車産業の中心でした。しかしNAFTA(北米自由貿易協定)の登場により、多くの自動車工場がメキシコなど諸外国に移され、たくさんの人々やその家族が職と富の源を失いました。NAFTAは当時大統領だったビル・クリントン氏により調印され、クリントン政権時に発効しました。

トランプ氏は事実上全ての演説において、執拗にNAFTAについて言及しました。シリコンバレーやニューヨークといった、貿易にそれほど依存しない地域に住む人々にとっては、トランプ氏が掲げる課題は大きな問題ではありませんでした。そのためカリフォルニアやニューヨークはあっさりとクリントン氏に投票しました。しかしミシガンやウィスコンシン、ペンシルバニア西部のように、貿易不均衡により弊害をもたらされた地域に住む人々にとって、トランプ氏の反NAFTA感情は耳に心地よく響きました。

そして第2の要因である不法移民について。これはほとんどのアジア諸国にとっては取りざたされないことだと思います。アメリカ人旅行者がミャンマーやベトナムに行くには、事前にそれらの国の大使館で観光ビザを取得する必要があります。また労働ビザを持たない状態での就労は、アメリカを含めほとんどの国で違法とされています。問題となっているのは、アメリカ当局が往々にして不法に入国した外国人の就労に対し見て見ぬふりをしてきたことでした。不法労働者はアメリカ人労働者に取って代わり、またアメリカ人労働者の給与額を引き下げる要因になりました。

アメリカ人を絶望と苦悶の淵に陥れた不法労働者のもう一つの問題は、犯罪や殺人に巻き込まれることです。不法移民が起こす犯罪により命を落とす人たちはトランプ氏により幾度となく取りざたされ、怒れるアメリカ人、白人層だけでなくヒスパニック層や黒人層に至るまで、拍手喝采と共感を呼び起こしました。ポリティファクト(政治家の発言を監視するウェブサイト)によると、犯罪を起こして刑務所に入れられた不法移民や合法的移民は少なくとも6万9千人に上ると言われています[1]。

 

トランプ氏の対日政策

予備選や本選の間、トランプ氏はとりわけメキシコや中国、日本を対米貿易不均衡の要因だと激しく非難しました。彼は日本の安倍首相のリーダーシップや円操作を「賢い」と評価する一方で「殺人者」であるとも言いました。候補者、特に共和党候補者として、貿易相手を非難することは前例の無いことでした。

トランプ氏は自身の「アメリカ第一」の政策を実施する一方、貿易の均衡に向けた交渉を進めていくと述べました。彼は今年8月にメキシコのエンリケ・ペーニャ・ニエト大統領の招きにより同国を訪問し、両国は和やかなうちに会談を終えたとみられます。今後行われる可能性のあるトランプ・安倍会談も、同様に和やかに進んでいくものと思われます。

 

[1] www.politifact.com/punditfact/statements/2016/aug/15/lisa-boothe/republican-strategist-says-25-percent-inmates-are-/

 

ダニエル・ペンソ

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米オレゴン州在住の日英翻訳家。1999年〜2009年の約10年間住んでいた東京を”第2の故郷”と呼ぶ。趣味は旅行、語学、。日本への旅行時には落語を楽しむ。
*ダニエル氏の詳細は以下のページをご覧下さい。 
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*日本語訳:徳橋 功  

*ダニエル氏の意見は、My Eyes Tokyoとは関係ありません。

 

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