カレー炊き出し隊 from スリランカ
インタビュー&構成:徳橋功
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Sri Lankan Curry Kitchen Project
困っている人を助けたい。私たちの心からの願いです。
今回は、国籍を越えて被災地に救いの手を差し伸べた人たちをご紹介します。茨城に拠点を持つ、スリランカ人のカレー炊き出しグループです。彼らは東日本大震災の発生後、すぐに被災地や避難民受け入れ地域に連絡を取り、震災から2週間後には早くも福島県の被災地へと向かいました。
福島県内の3カ所の被災地を回り、合計2000食のカレーライスを配った彼ら。でも、まだまだ動きは止まりません。4月24日には、津波被害に遭った首都圏の街、千葉県旭市に約330食分のカレーを届けました。
人種も国籍も越えて救いの手を差し伸べる彼らの原動力は何なのか。このプロジェクトのリーダー、在つくばスリランカ民主社会主義共和国名誉総領事のメダガマ・ガマゲ・スニル氏にお話をお聞きしました。
*インタビュー @ 旭市に向かう車内 (by 徳橋功 & 伊藤勝敏)
*旭市での炊き出しの様子(2011年4月24日): こちら
*炊き出し隊の他のスリランカ人のコメント:こちら
中央FM『My Eyes Tokyo』5月7日放送分(ラジオ音声をお聴きになれます)
英語版はこちらから!
「助けたい」は心からの気持ち
私が陣頭指揮を執っている茨城県の炊き出しプロジェクトが最初に向かったのは、福島県いわき市でした。地震発生から約2週間後の3月23日です。その後も、県内の郡山市や田村市に約1500食のカレーを届けに行きました。最初は茨城から常磐道を通って行ける、首都圏も含めた、被災者が避難している地域全部に声をかけました。そして福島県が私たちの炊き出しを受け入れてくださいました。
今回の旭市は4度目の炊き出しで、初めて千葉県の避難所を訪れます。今回は旭市全体で327人の方に、私たちのカレーを届けます。旭市に知人がおり、彼が「私たちも手伝うから、是非来ていただきたい」とおっしゃったのがきっかけです。
日本のメディアで大きく話題になったのは、栃木から被災地にカレーを届けに行ったグループです。彼らもスリランカ人なんです。彼らだけでなく、東京や千葉など、関東一円のスリランカ人グループが被災地のために動きました。それは「炊き出しをするなら領事館主導で行った方が良いのではないか」という声が出たからで、それでスリランカ大使館に相談して、それから私たち在日スリランカ人の炊き出しプロジェクトが始まったのです。我々全体で、これまでに1万食以上のカレーの炊き出しを行ってきました。
でもそれは、決して義務感ではありません。我々は「喜んで」自分たちにできることをやろうとしています。「困っている人たちを助けたい」と、心から思っての行動なのです。
おいしそうなスリランカカレーに、避難所の人たちも嬉しそう!
千葉県旭市 (2011年4月24日)
ついに、国が動く
カレー以外にも、近々紅茶がスリランカ本国から送られてくる予定です。カレーの炊き出しは日本国内のスリランカ人のプロジェクトですが、紅茶はスリランカの国そのものが動くプロジェクトです。40フィートコンテナ1本分の紅茶、つまり約15〜16トン相当が、4月28日に宮城に送られます(*インタビューは4月24日)。これだけあれば、3ヶ月くらいは持つと思います。辛い避難所生活の一服の清涼剤になればという、私たちスリランカ人全員の思いが紅茶に込められているのです。
日本人は強い人たちです。しかも世界中が応援しています。だから街の復興や元の生活に戻るまでには時間はそれほどかからないと思っています。お金の援助も有効でしょう。だけどやはり、非常時はお金以外のものを送る方が、被災地に直接貢献できるような気がします。私たちも出来る限り、この活動を続けていきたいと思います。
昔の日本もそうだったと思いますが、私たちスリランカ人には「分かち合いの精神」があります。それに親や学校から「誰かが困っているのを見たら、それがたとえ自分の敵であっても助けなさい」と教えられてきました。「非常時は敵・味方などというものは忘れるんだ」と。もちろん日本は、昔からの友好国ですが。 私たちは、日本から大変お世話になっています。スリランカと日本は元々関係が深いですし、同じ仏教国であることはもちろん、スマトラ沖地震の時も日本にお世話になりました。日本人の友人は「いや、日本はスリランカにもっとお世話になっているよ」と言ってくれますけどね。
確かに第2次世界大戦の終戦後、当時のスリランカの大蔵大臣、ジュニウス・リチャード・ジャヤワルダナ氏が日本への賠償金請求の放棄を国連で演説し、アジア各国の賛同を得、それが結果的にサンフランシスコ講和条約の速やかな締結につながりました。それにスリランカは、日本への最大の角膜供給国でもあります。
でもいずれにしても今回は、自分たちが日本を助けに行く番だと思ったのです。
*被災地の方々の声
初老の男性:
「カレーはおいしいです。スリランカのカレーは初めてで、辛いって聞いていたけど、僕にとってはちょうど良い辛さですね。僕はまずいご飯にははっきりと”まずい”という質だけど、これは本当においしい。しかも、領事(スニルさん)が僕に握手してくれたんですよ!」
76歳女性: 「スリランカのカレーはもっと辛いのだと思っていました。でも辛くないですね。15年くらい前に、スリランカから私の職場に働きに来ていた人がいて、その人はいつも自分で7種類から10種類くらいのカレーを並べていたんです。それらは本当にスープのようなカレーだったので、”きっと薄味なのだろう”と思いました。一方でこのカレーは少しとろみがあるけど、味は思ったよりマイルドで食べやすい。食べながら彼のことを思い出しましたよ。懐かしい思い出です」
スリランカ炊き出し隊関連リンク
旭市での活動の様子(2011年4月24日):こちら
炊き出し隊の他のスリランカ人のコメント:こちら
中央FM『My Eyes Tokyo』5月7日放送分(ラジオ音声をお聴きになれます)
彼らの拠点、レストラン「ランディワ」(YouTube):こちらをクリック & 再生!