池永大輔さん&サヴィーニ・ライオンズ Part2

インタビュー&構成:徳橋功
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Daisuke Ikenaga & Savigny Lions
フランス野球チーム監督兼選手


人からしていただいたことは、人に自然に返すもの。

 

フランスの野球チーム「サヴィーニ・ライオンズ」の監督兼選手、池永大輔さんのインタビューをお送りしています。Part2では、池永さんの日仏野球の”橋”としてのご活動を中心にお送りします。

<池永大輔さん>
1980年東京生まれ。小学校5年から野球を始める。埼玉県立草加東高校、中央学院大学でそれぞれ野球部に所属するも、大学卒業後はアルバイトやプロ球団のプロテストを受ける日々が続く。2005年に渡米し、元巨人のウォーレン・クロマティ氏が監督を務めた”ジャパン・サムライ・ベアーズ”に入団。その後やオーストラリアなどでプレー後、渡仏。「サヴィーニ・ライオンズ」の2軍監督兼選手を務めた後、2012年のシーズンは1軍監督兼選手およびフランス代表アシスタントコーチを務める予定。

*講演@千葉市(2012年2月7日)
*英語版はこちらから!

 

Part1からの続き)

フランス人選手を

2005年の「四国アイランドリーグ」創設により生まれた”独立リーグ”は、今はもう日本に根付いた感がありますが、この講演の一番最初に申し上げたフランス人の黒人選手、フレデリック・ハンビが、BCリーグの一つである”群馬ダイヤモンドペガサス”に入団することになりました。フランス人は彼ともう一人、フェリックス・ブラウンという選手がダイヤモンドペガサスに入団するわけですが、フランス人が野球でプロ契約を結ぶのは彼らが初めてです。の野球サイトでも特集されていました。しかも彼らはWBCでフランス代表選手にもなるでしょう。

それだけ歴史的なことなのですが、彼らとを結んだのは私です。いわゆる”代理人”ですね。彼らを群馬や新潟、四国にプロテストを受けさせる際のドライバーから、通訳・事務代行・契約交渉に至るまで、全て務めました。まさか自分がこんなことをするようになるなんて、思ってもいませんでしたね。人のお世話をするなんて、全く思っていませんでした。

やはり、人からしていただいたことは、人に自然に返すものなんですね。例えて言うと、水の中に物を落とした時に広がる波紋が、壁にぶつかってまた自分に返ってくるような感じでしょうか。私は、人に何かを与えられるくらいの大きな器を持っていたいなと思っています。何年も野球をやるうちに、自分の周りで動いてくれる人がものすごく増えてくる。私はその人たちのおかげで野球が出来ているんだということを、今実感しています。だから今度は、野球フランス代表のアシスタントコーチとして、皆に与えられるものは出来る限り提供したいと思っています。

 

先人の功績

「フランス」「野球」これらのキーワードで真っ先に連想されるのが、1985年に阪神ガースを優勝に導いた吉田義男さんです。吉田さんは1989年から1995年まで野球フランス代表の監督を務められました。吉田さんもかつて阪神でショートをされていて、その当時の守備をYouTubeで見たのですが、もう笑っちゃうくらい動きが早い(笑)私も捕ってから投げるまでが速いと言われますが、吉田さんの場合は捕ると同時に投げてました(笑)。

吉田さんはフランス野球・ソフトボール連盟の名誉会員で、今でも毎年フランスにいらしています。フランスで野球をやっている人なら知らない人はいないくらいです。だから一番初めでお話しした、各国の野球スタイルですが、フランスの野球は日本の野球スタイルです。一方で、それ以外のヨーロッパ諸国の野球はアメリカンスタイルです。

私も吉田さんには3〜4回お会いしました。フランス人が日本のチームに入団したり、一緒に練習したりできるのは、まさに吉田さんの功績なんです。これまで申し上げたように私がフランスで活動できるのも、吉田さんが土台を築いてくださったからです。

野球を通じてヨーロッパに行けるなんて夢にも思っていなかったし、日本だけで野球をやっているだけでは触れられない異文化に触れられたり、日本とは違うスタイルの野球に触れることができる。これらは全て、私の財産です。

私はかつて、野球で挫折をした後に日本国内を一人で回りました。今はそれに近い感覚があります。「いろんなところで野球をやりたい」と思えるようになったのは、その一人旅がルーツだったのかなと、今にして思います。

吉田義男さんと。

 

世界で、日本で、夢を開花

今シーズンは1軍での監督兼選手で、チーム人事にまで手を出せる立場になります。我が「サヴィーニ・ライオンズ」のオーナーは、吉田義男さんがフランス代表監督をしていた時のアシスタントコーチでしたから、日本人大好き。ウチのチームは1軍・2軍合わせて、全部で外国人を4人獲得できるんですけど、チームは「外国人全員、日本人」という方針です。そこで、私が1軍に行くことで空いた2軍監督のポストに、日本人を充てることにしました。でも、その人は大変でしょうね。私が1勝19敗から10勝10敗にしたことで、ハードルが思いっきり上がってしまったから(笑)

私としては一旦日本のプロ野球を放り出されてしまった人の再雇用先に、フランス野球が位置づけられたらいいな、と思います。実際にそういうオファーはあります。でも、フランス野球はまだ”プロ化”していません。私を含めた外国人選手はプロ契約ですけどね。だからビッグネームを受け入れられるようにするための組織固めや、財政面・設備面の整備をしていきたいと思っています。後は集客ですね。特にフランスの地方で試合すると、観客というよりは、選手の家族と思しき人たちしか来ていませんから(笑)

今年はヨーロッパカップがあり、しかもフランス代表は初めてWBCの予選にも出ます。できればバッティングピッチャーでも何でもいいからWBCフランス代表の一員になって、ヨーロッパの野球強豪国であるオランダやの実力を間近で感じたいですね。

それで、もしWBCの予選で日本と当たって、例えば私が1塁コーチでグランドに立っていたら、を初め日本の人たちが「アイツは誰だ!?」と思うかもしれません。むしろ、そう言われたいですね(笑)。

ヨーロッパの野球は、未知の部分がまだまだたくさんあります。フランス野球で言えば、特にカリブ諸国にすごい選手がいる可能性だってある。だからフランス野球にはまだまだ伸びしろがあると思います。だから、それだけ自分のできることもたくさんある。隙間産業と言っても良いでしょうね。だから私はヨーロッパの選手たちを日本に連れてきたり、逆に日本の選手をヨーロッパに連れて行ったりして、野球を通じた交流をする。私はその窓口になりたいですね。そのためにも、ゆくゆくは日本で球団運営に携わりたいです。

その後は・・・地元で子どもたちに野球を教えようと思っています。私が培って来たものを、地元に還元したいですからね。

フランス代表首脳陣と。右端が監督のファビアン・プルースト氏。

 

池永さんにとって、野球って何ですか?

心を育んでくれる辞書のようなものですかね。

野球の中には学べることがたくさんあります。 特に昨年は東日本大によって人と人との絆についてすごく考えさせられたということもありましたが、人間って1人では生きていけないと実感し、野球も1人では勝てないということも改めて感じています。

チームメイトを思いやり、彼らのプレーに一喜一憂することは、それこそまさに「絆」なんですよね。

よく友達と野球に例えて「人生の送りバント」・・・うん、なかなかいい言葉だ、「人生のダブルプレー」・・・これダメだろ(笑)とか、やたらと野球を人生に例えて話したりもしています。要するに野球って人生に似ていて例えやすいんですよね。

そして何といってもボール一つで世界が繋がるというこの一体感。その気になればボール一つで世界中の人たちと会話ができます。世界の紛争ってボール一つで簡単になくなるんじゃないかと思っています。

We are (B)all oneですね。

 

講演@千葉市(2012年2月7日)

 

池永さん関連リンク

サヴィーニ・ライオンズ(仏語):http://www.savignybaseball.com/

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Interviews with international people featured on our radio show on ChuoFM 84.0 & website. Useful information for everyday life in Tokyo. 外国人にとって役立つ情報の提供&外国人とのインタビュー

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