関根健次さん&ユナイテッドピープル Part 2

インタビュー&構成:徳橋功
ご意見・ご感想は itokuhashi@myeyestokyo.com までお願いします。

 

Kenji Sekine & United People

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一人一人が幸せを分かち合える世界を築きたい。

 

募金サイト「イーココロ!」を運営する会社の社長を務める若き社会起業家、関根健次さん。インタビュー第2部は、社会貢献とビジネスの結びつけ方や、関根さんが理想とする世界像についてお送りします。

*第1部はこちらから→クリック!

 

* 関根健次さん(1976年〜)
1976年神奈川県生まれ。米ベロイト大学卒業。食品関連企業やIT企業など数度の転職を経て、 2002年にダ・ビンチ・インターネット有限会社を設立、2003年5月より募金サイト 「イーココロ!」の運営を開始(*2015年3月末にサービス終了)。2007年2月、商号を「ユナイテッドピープル株式会社」に変更。同年9月、第2回ソーシャル・ビジネス・アワード「マイクロソフト奨励賞」を受賞。2009年には映画配給事業にも進出する。2010年、チェンジメーカー(社会起業家)育成を目的とした旅プロジェクト “BADO!” を開始

 

*インタビュー@ ユナイテッドピープル株式会社(横浜市中区)
*イーココロ!を始めた経緯の詳細はこちら(「イーココロ!」HPより)
*関根さんの著書『ユナイテッドピープル – 「クリックから世界を変える」33歳社会起業家の挑戦 -』(ナナロク社)のご紹介:こちら
*英語版はこちらから!

 

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募金サイト「イーココロ!

 

Part1からの続き)

会社を立ち上げて、募金のスポンサーを募るために営業をしても、たくさんの企業から断られたと聞きます。そんな時「何でオレの思いを分かってくれないんだ!」って思いませんでしたか?

思いましたよ。でもそこで悩んでもしょうがないから「じゃあ、どうしようか」と。

ある時に、人から良い言葉をいただきました。「できない、とか、上手くいかないという状況が人生には多々あるけれども、その時に”出来なかった・・・”と落ち込むのではなく、”どうやったら出来るんだろう?”と考えればいいじゃない」。正に至言でした。その”どうやったら”という言葉をつけた瞬間に、物事は壁を突破して進んでいったんです。

ある企業からクリック募金のスポンサーを断られてしまったら、じゃあどうやれば断られずに話を聞いてもらえるんだろう、どうやったら僕が考えたシステムを採用してくれるんだろうと考える。それをずっと繰り返しました。そうやって自分が理想とする社会像と、現実の社会状況のギャップを埋めていく作業を地道にやっていきました。

 

具体的にどのように埋めていったんですか?

例えばある企業さんから「ウチは関心はあるけど、ちょっと今の状況では出来ないかな」と言われたとしますよね。そうなったら僕は「じゃあどうすればご協力いただけますか?」と、その場で聞いてしまうんです。自分の目の前にいる担当者にその場で聞くんですね。すると相手は「こういう感じだったら協力してもいいよ」と言ってくれます。そこで僕は会社に帰って一気にプランを練り直し、プレゼン用の書類を新たに作ります。

そして1週間以内にその担当者に再びアポイントを取って会いに行くと、「しょうがないな、協力するよ」と言ってくれる。その繰り返しで、少しずつスポンサー様が増えていきました。

 

関根さんが企業に提供しようとしているサービスは、例えば携帯電話の営業のように「このサービスを使えば社員間の通話料が安くなります」という分かりやすいものとはちょっと違いますよね。

でも僕は、社会貢献を企業へのサービスに絡ませることはそれほど難しくないと思っています。例えば月々支払う電気代がありますが、例えばある人が「火力発電や原子力発電の環境への影響を考えると、心が痛む。それらから供給される電力にお金を払いたくない」と思った時に、ある会社が「あなたが払ってきた額と同じ料金を払ってくれたら、私たちは全ての電力を風力発電でまかなえます」と提案する。ここで行われているのは「置き換え」です。同じサービスなんだけど、届け方が違う。そうすると選択肢が生まれます。その「置き換え」はいろんな分野、例えば間伐材で家を建設する工法が生まれたら、環境保全に立派に寄与することになります。

持続可能な社会のためには「大量生産・大量消費」の風潮を変えていかなくてはいけないことは、皆が分かっています。そのためのひとつのアプローチは、一生使えるものを作っていくことが大事ですよね。使い捨てを前提とした商品の開発をやめるなど、方法はいくらでもあると思います。

例えば万年筆。これは一部のコレクターを除けば、一生に1本あれば十分なはずです。商売としては一生使えるものだから、万年筆の価格は多少高くたっていい。それでは、ひとりが生涯で1本しか買わないビジネスなんて成り立たない、と思うかもしれませんが、万年筆のインクやケースと言った周辺の消耗品を売るビジネスで企業を存続させられると思うんです。それにより、使い捨てのボールペンやシャープペンの生産量をかなり減らせると思います。その結果として、必要とする資源の量が減っていくのではないか、と考えているんです。

消費者が、一生使えるものを選択していくことも同時に重要ですね。そのような取り組みは企業こそができるはずなんです。企業が社会とより密接につながったマーケティング、いわゆる「ソーシャルマーケティング」を実践し、そもそも問題を起こさなければ、やがてはNGO・NPOの存在も必要でなくなる日が来るかもしれません。

 

関根さんの関心は戦争・紛争から環境保護、自然との共生と幅広いのですが、ご自身の中ではそれらは一つですか?

これらに共通するのは「欲望」と「想像力」だと思います。ありあまる欲望と想像力の欠如が自然を破壊するし、戦争の発端は欲望ではないかと思います。

僕が間違っていると思うのは「戦争の原因は貧困だ」という通説です。これは僕にとっては”Yes, but No” なんです。Yesの場合もあるけど、大体においてはNoだと思います。

戦争というのは、実は「勝てる方が起こす」のではないかと。基本的に、どの国も負ける戦争はしません。勝算があるから戦争を起こして、いろいろなものを奪っていく。

その源にある「他人のものが欲しい、殺してでも奪いたい」という欲が、これからは一つのものを分かち合う「シェアリング」の心に変わっていかなくてはならないと思います。今までの資本主義は個人の欲望を肯定的に捉えて、個人の利益や会社の利益の最大化し、国益を優先させることに努めてきた。そうではなく、これからは個人でも会社でも国でも「シェアリング」の精神を持つ、つまり自分たちの持っている物を公共財として他とシェアしていくのです。

もう一つの「想像」ですが、例えば「この商品を買い続けると、やがてはアマゾンの森林が消滅する」ということを想像できるかどうかです。「このダイヤモンドを買うと、一人の人が死ぬ」と想像できるかどうかです。それらを具体的に想像できる人は、行動が変わるんです。

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国際協力NGO「アムルト」が開設したマイクロビジネススクール。
女性の自立支援を目的としている。

スリランカ南部 05年12月 *写真提供:ユナイテッドピープル

 

僕がよく思うのが、ファーストフードなど体にあまり良くないとされているものを作る企業が世界的企業になり、一方でフェアトレードのような環境や人体に良いもので、なおかつ途上国の経済支援の側面もあるというものはすごく小規模にしか成されていない。それだけ人間というのは欲深い生き物なのかと考えてしまうのですが、関根さんは人間に対して望みを捨ててはいませんか?

もちろんです。宗教とか国籍の違い、お互いの過去の憎しみや悲しみを乗り越えてつながっている人たちが実際にいるわけですから。それはイスラエルとパレスチナに限らず世界中のあらゆる場所に存在します。

イデオロギーなどの難しい話を抜きにして、お互いにファーストネームで呼び合える関係を構築している人たちが、ちゃんと存在しているんです。名前の前に「イスラエル人の〜」とか「パレスチナ人の〜」という言葉をつけるのではなく、「ジョン」「ジャック」「ケンジ」「イチロー」といったファーストネームで呼び合うことが、当たり前のように、何の偏見もなく、全世界のいろんな人とできる。あとは「違いを認め合う」ことのできる土壌が必要ですね。

今各地で起きている紛争や対立を無くしていくためには、どうすれば良いだろうか。その解決策を見いだすためには、人同士が同じ方向を向くことが大事なんです。それは、イスラエルとパレスチナの間で実際に行われていることです。

例えば去年(2009年)、イスラエルとパレスチナを再訪問してきましたが、ユダヤ人とアラブ人が平和構築を目的として同じNGOで働いていたり、企業を経営していたりする事例を見てきました。人種や国籍や宗教を超えた「人間」として、紛争解決のために彼らは動いているんです。それらの事例を実際に見て、本当に感動しました。彼らはすごく自然体にそれをやっているんです。そう、ファーストネームで呼び合う関係で。

ロイターが取材した、イスラエル系ITベンチャー企業「G.ho.st」。G.ho.stはパレスチナ自治区内の
パレスチナ人を積極的に採用し、パレスチナの経済成長や平和構築に貢献している。

*関根さんが、2009年9月にG.ho.stのCEOにインタビューしました。映像は こちらから

 

関根さんの理想とする世界は、どんな世界ですか?

誰もが自由に行きたいところに行けて、好きなことが自由に発言できて、人が自由に交流し、一緒に飲み食いできる世界ですね。

もうひとつは、一人一人が幸せを分かち合える世界です。例えば皆さんの近所付き合いのレベルでもいいでしょう。「野菜が採れたから、一ついかが?」みたいなコミュニケーションが活発になれば、ひとつの小さなコミュニティが生まれるでしょう。そのコミュニティがどんどん増えて、ひとつの世界になっていくというのが理想ですね。

 

世界の紛争も自然破壊も、個人の欲が発端なんだということが、お話を聞くうちに僕も分かりました。そしてこれから大事になってくるのは、個人が自分の欲を満たすためだけに働くのではなく、自分が得たものを皆で分け合おうという気持ちを持つべきではないか、ということですね。

そうですね。「他人のものが欲しい」という欲望を「これ、余ったから分けようかな」というシェアリングの精神に切り替えられれば、戦争が起こる前にその芽を摘み取ることができると思うんです。富の不均衡はどうしても避けられませんが、その場合は持っている者が持たざる者に、当たり前のようにモノを分け与えるということが起これば、それだけで紛争が解決できるかもしれません。そういった「シェアリング・マインド」が道徳として人の内面に備わった時に、世界は大きな変化を遂げるのではないかと思うんですよね。

 

今、関根さんが力を入れていることは何でしょうか。

「旅」です。僕は「知る」と「感じる」は全く違うものだと思っています。「知る」というのは情報のインプットをするだけであって、心まで動くことは少ないです。例えばカンボジアに地雷がたくさん埋まっているという話を耳にしても「へぇ、そうなんだ」で終わってしまいますよね。今、全世界に1億以上もの地雷が埋まっているそうですが、その数だけ知識としてインプットされているのと、実際に地雷が埋まっている村に行って、地雷によって片足がなくなった子どもと話すのとでは、感情の揺れ方が全く違うんです。

そのように心が揺れ動くことによって人生が豊かになるし、人生が変わる。そして世界を発見することが、人の想像力を豊かにします。この「想像力を豊かにする」ことはすごく重要だと思っています。 だけど想像力は、日常生活ではなかなか培えない。何故なら多くの人は会社や学校といった、閉じられた世界にいるからです。そこでユナイテッドピープルでは最近、「BADO!」という旅プロジェクトを立ち上げました。

“Borderless Action and Documentary”の略で、世界を旅する若者が、旅先での出来事や感じたことを、動画を用いてリアルタイムに世界に伝え、旅を通して成長し、若者が世界を変える「チェンジメーカー」になることを応援する旅の大学プロジェクトです。

この「BADO!」が、弊社が今一番力を入れているプロジェクトです。実際に現地に行って、見て、感じてもらう。多くの人は、人生が変わるくらいの体験をすると思います。それを日本に持ち帰って、政治の世界に入ったり社会人になったりマスコミの世界に入れる。やがては内側から社会を変えていけるかもしれない。世界の紛争により強い関心を持てば、解決へのアプローチは変わるかもしれない。そのように、社会や世界を少しでも良くするためのアクションを起こす人を増やしたいと思っています。

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BADO!専用サイト(http://www.bado.tv)

 

行動の内容は人それぞれでも、きちんと「自分」と「社会」とのつながりをちゃんと見つめ、自分も社会もハッピーになっていくという関係を築くために、自分が今できることをやる。そういう人を増やしたいですね。

 

 

関根さん関連リンク

ユナイテッドピープル株式会社:http://unitedpeople.jp/
イーココロ!http://www.ekokoro.jp/
BADO!:http://www.bado.tv
イーココロ!TV:http://www.youtube.com/user/ekokoro

関根さんの著書『ユナイテッドピープル -「クリックから世界を変える」33歳社会起業家の挑戦 -』(ナナロク社): http://unitedpeople.jp/cms/news/post_42.html

 

 

 

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