難民起業サポートファンド

インタビュー&構成:徳橋功
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「日本で、自分の手で何かを始めよう」とチャレンジをする難民がいます。

 

世界の諸問題の解決や、日本の社会の活性化に革新的なアイデアで取り組むイノベーターたちのインタビュー、今回のテーマは” x ”です。

これまでもMy Eyes Tokyoでは、日本国内に住む難民を支援する人たちをインタビューしてきました。その上、関東近郊に住む難民ご自身にもインタビューしてきました。

難民という人たちの存在は、まだまだ日本の日常生活に浸透しているとは言えません。難民として認定されている人たちは、この日本で非常に数が少ない、というのもその要因でしょう(難民申請者数の1%以下)。この状況は世界から”難民鎖国”と揶揄されていますが、その一方で”難民の起業家を支援する”団体が日本にあることを知りました。それが今回ご紹介する「難民起業サポートファンド」です。

お話をお聞きしたのは、難民支援協会事務局次長であり、難民起業サポートファンドでも事務局長を務められている、吉山昌さん。大学時代から難民問題に興味を持ち、その流れで大学在学中の1999年に難民支援協会設立に参画。以来約15年間”命からがら日本に逃げてきた難民たち”の姿をご覧になってきた吉山さんに、一見全く無関係に思える”難民”と”起業”とを結びつけた経緯と、その事業内容についてお聞きしました。

*インタビュー@難民起業サポートファンド(四谷)

 

徐々に進む難民雇用

日本の現状では、就労資格が与えられた難民申請者に対して、職業訓練や社会適応訓練、日本語指導などがほとんど提供されないうちに、日本社会に放り出しているように見受けられます。それらのサポート不足が課題となっています。

そんな中、難民支援協会(Japan Association for Refugees, 以下”JAR)の就労支援事業では、これまでに様々な業界へと就職した難民を支援してきました。彼らが就職した会社は、難民支援よりはむしろ、外国人雇用を進めるという考えから、難民の雇用を進めた面があります。です。就労資格に問題が無く、長期にわたって育成することができる外国人として、結果的に難民を雇用することになった、ということです。そのような企業は少しずつですが出てきています。

企業側からは「社員に刺激を与えることができた」「仕事ぶりが大変真面目」という声をお聞きします。一方で、習慣の違いをはじめとした様々なすれ違いからトラブルも発生しており、地域の企業や自治体の方々と勉強会を行うと共に、今後は難民向けの就労前の訓練を行う事も検討しています。

一方、JARで就労支援に関する議論と並行して、”難民の起業”への支援についても、議論を始めました。もちろん誰しもが起業できるわけではありませんが、起業することで雇用が生まれますので、その点で就労支援と起業は関連しています。ただし、起業支援についてはJARとは別に団体を立ち上げる必要があり、その分時間がかかりました。

 

就労支援も起業支援も目的は同じ

起業支援を目的に立ち上げたのが「難民起業サポートファンド(Entrepreneurship Support Program for Refugee Empowerment, 以下”ESPRE”)」で、経営支援と少額の融資を行っています。JARとは独立した法人ですが、事業としてはJARの就労支援と並列のものと考えています。つまり「就労支援」と「起業支援」の2通りの道を見ている、ということです。意外に思われるかもしれませんが、難民の中には「日本で、自分の手で何かを始めたい」と考える方々がいるのです。

ただ、私たちのような”マイクロファイナンス”に過度の理想を持たれる方もいます。「これこそが貧困を解決する素晴らしいツールなのだ!」と。でも実際は「このシステムが有効な人もいる」と捉えていただいた方が良いと思います。その”有効な人”とは「能力や意欲がありながらも、社会的なハードルにより起業の機会が阻まれている人」ですね。そういう人たちにチャンスを提供すれば、そこからの波及効果が見込めるのではないか、と思っています。

そしてもうひとつ、就労支援も起業支援も、いずれも”経済的自立”を促すという部分で共通しています。ゴールは同じなのです。

 

本気の「難民起業家」をサポート

私たちESPREが融資するにあたり、難民起業家たちの「事業内容」や「事業計画」についてヒアリングをします。ただ一番重視するのは「本気度」です。本気でその事業に取り組む覚悟がある方には、できるかぎりサポートを提供しています。

サポートしているケースに、中古車輸出業を立ち上げられた、パキスタンからの難民の方がいます。本国を逃れて日本に来てから、かなり早いタイミングでインド料理店を立ち上げられ、その後景気の状況などから現在の事業を始められました。ESPREでは、彼を第一号の融資先とするとともに、事業計画の議論などをさせて頂いています。融資後事業は順調に成長し、2期連続で売り上げを倍増しています。

また、融資を行う前に、経営支援を行っている先もあり、8〜9人の難民起業家の事業を、様々な形で支援しています。事業の多くは飲食店ですが、他にも言語を活かした事業など、多様です。より売り上げが上がるよう、日本の顧客の視点も活かしながらアドバイスを行っていますが、時には手を動かしてサポートすることもあります。

難民が起業する背景に、企業に正社員として就職するのはなかなか難しく、アルバイトとして働いていると、年を取っても続けられるかどうか不安を感じるという現実があります。そこで、働いている間にお金を貯めて、チャレンジをする人がいます。

ただ、お店を開こうとした際、その物件のオーナーが難民や外国人を敬遠するケースがあり、残ったのは悪条件の物件、ということもあります。そのため、ときには物件を探す支援も行います。また融資に際しては、基本は難民本人と銀行側とのやり取りですが、私たちが間に入って、難民の立場というものを銀行にご説明させていただいたこともあります。

 

難民が活躍できる社会を

私自身は大学時代から難民支援に関心を持ち、一旦コンサルティングファームに就職した後、この世界に再び帰って来ました。そして今、難民の方々の起業をサポートさせていただいていますが、それは私自身が難民や外国人が自分を活かして活躍する姿を見たいからです。私は高校時代、難民問題に携わる前に障害者関連の活動をしていました。その現場で見た、自分たちで自分たちの自立を実現していく姿が、私の原体験になっていると思います。

難民のチャレンジを少し支え、それにより成功例が生まれる。つまり難民起業家たちが主役となり、私たちは彼らのサポーターに徹する。そうなればいいなと思いますね。

英語圏には”Refugee background”という言葉があります。”Refugee”(難民)とは違い、昔は難民だけど今は違うということを示す言葉が英語にはある。でも日本は一度難民になったら、どこまでも”難民”というレッテルがはがれません。だから日本にも”Refugee background”に相当する言葉が出てくる状況を、早く作りたいですね。

そしてかつて難民だった人たち、つまり”Refugee background”を持つ人たちが、それぞれのアイデンティティを有しながらも、普通に一住民として日本で当たり前に暮らし、活躍するような社会を目指すことに、貢献していきたいです。そのような難民の姿は、社会全体に対しても良い刺激になると思います。

 

ESPRE関連リンク

難民起業サポートファンド:http://espre.org/
難民支援協会:http://www.refugee.or.jp/

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