加藤久美子さん Part1

構成:徳橋功
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Kumiko Kato
天才少年の育ての親

私たちMy Eyes Tokyoがリアルに出会った素敵な方々をリアルにご紹介する「」。第6回目となる今回は、”天才少年”を育てたお母さんがゲストです。

加藤久美子さん。自動車ジャーナリストとして活躍する一方、数多くのメディアでの出演歴を誇る少年、加藤博人君を育て上げました。上の映像で「子どもの限界を決めないで」と堂々と訴えているのが博人君です。小学校6年生にしてTOEIC940点、ミニカー数千台所有、携帯電話は目隠しをしてもその機種を当ててしまうなど、常人を超えた才能の持ち主である博人君を育てた久美子さんは、自身の独自の子育て術を書籍にまとめました。

私たちが加藤さん母子に出会ったのは、”英語キュレーター”として活躍中のセレンさんと共催した『ぼくらの英語サミット〜とことん英語を語ってみよう〜』(2013年2月27日)というイベントでした。英語に強い関心を持つ大人たちに交じって、男の子がお母さんと思しき人と会場にやってきました。それが、当時小学6年生、TOEIC900点越えを果たした博人君と、育ての親である久美子さんでした。

昨年1月からほぼ毎週、英語朝活を続け、他にも英語に関するイベントを数多く行ってきたMy Eyes Tokyo。普通に考えれば、博人君にフォーカスを当てるでしょう。しかしMET Peopleは、そんな単純なイベントではありません。天才少年ではなく、天才少年を育てたお母さんをゲストに迎えた背景を、企画者のMy Eyes Tokyo山崎千佳が語ります。

 

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私は普段、子育ての本は読まないのですが(押し付けがましいので、好きではありません)あるきっかけで、加藤久美子さんのご著書『「固有名詞」子育て ― ふつうの子でも知らぬまに頭が良くなった55の方法』(朝日新聞出版)を読んだところ・・・目からウロコでした。
私自身、7歳と2歳の女子を持つフルタイムのワーキングマザーです。言い訳になってしまいますが、忙しい生活の中で私自身に余裕がなく、娘たち、特に長女と会話する時に彼女を急かしたり、効率よくコミュニケーションがとれなくて、イライラしたりしていました。長女の知らない単語を使って説明を求められると「はいはい、あれだよあれ」みたいにあしらってしまうことも多々あり・・・

そんな私は、久美子さんがご自身の経験を”あくまで皆さんに一つのアイデアとしてご参考にしていただく”というスタイルに好感を抱きましたし、お子さんである博人君との関わり方にも深く感銘を受けました。固有名詞を使用しての日々の会話というメソッド、そしてそれ以上に「すごく愛に満ちているな」と・・・。だからこの本を読んでから、私は意識して言葉を選ぶようにしました。

娘たちとちゃんと向き合って、ごまかさないであしらわないで、一つ一つの物事に関わる – 正直言って結構体力や気力を要することでしたが、実は遠回りに見えて、これが親子の信頼関係を育む最短の道でした。何よりも、娘たちはとても気持ちが安定するのです。あしらっていた時の方が反発や不満を持たれ、またその態度に私がイライラするという悪循環が生まれていたことに気づかされました。

また、我が家では二人とも首がようやく座った生後4か月の頃から、ある幼児教室に通わせているのですが、正直申し上げると子どもたちのことは教室に任せっきりでした。高い月謝を払ってるから、効果があるだろうと・・・。親からの語りかけは教室も推奨しているのですが、「その教室に通えば万事OKで、親の負担はないだろう」と私は思っていました。でもそれは間違いで、教室はあくまで補助に過ぎず、親からの語りかけや、親が子どもと一緒に取り組んでいく姿勢こそが必要不可欠なのだと気がつきました。今では時間を見つけて、宿題に一緒に取り組むようにしています。

「丁寧に子供と向き合うことが大事」「子供は何よりも誰よりも、本能的にお母さんが大好き」。久美子さんのご著書を通じて、こんな当たり前のことに気づかされたのです。お伺いしたエピソードは、一人の母である私にとってはどれも皆様にお伝えしたいものですので、2回に分けてお送りいたします。

*インタビュー:山崎千佳
*会場:東京都江東区(2014年3月15日)
*協賛:セレナイト(詳しくはこちらをご覧下さい)

 

絶対に死ぬな

My Eyes Tokyo(以下”MET”):久美子さんは”子育て”というよりは”子育ち”、つまり子供が育っていくのを見守るスタンスですね。そして久美子さんが掲げているのは”愛と信頼の子育て”で、しかも”がっつり肉食系”とお聞きしました。今日の結論を先に言ってしまいますが、究極の”子育ち”は「子供を死なせないこと」だそうですね。それはどういうことでしょうか。

加藤久美子さん(以下”久美子さん”):実は私が通っていた幼稚園、実家の方にある”下関市立第三幼稚園”の梅本園長という方が毎日帰りの会で子供たちに向かって言うことが、「皆さん、約束です。絶対に死なないこと!」でした。
なぜ、毎日4〜5歳の子供に向かって「死なないこと!」なんて言うのかな?と私はずっと思っていました。その時期の子供と言うのは、”死ぬ”という言葉が何となく恐いとか暗いとか、悲しいものと思っていて、幽霊とかお墓とか、そういうイメージしかないんですよね。
でも自分が子供を持った時に、その重みがひしひしと感じられるようになりました。人間も「生き物」ですから”命を繋いでいく必要性”を本能的に理解しているのですが、その中で子育ての方法というのが沢山あります。例えば可愛く着飾らせてペットのように連れて歩くような子育てに憧れる母親もいれば、小さい頃から英才教育や右脳教育を与えて天才に育てたいとか、バイリンガルに育てたいとか、いろいろな方針や価値観があると思います。
でも突き詰めていけば、親が子供に教える最も大事なことは、”死なない方法”だと思います。そしてそれを教えるのが親の役目だと思っています。”死なない方法”と言うと、不慮の事故や交通事故を未然に防ぐとか、危ない場所に行かないようにしたりマンションの上から転落しないようにしたり・・・そういうことが真っ先に考えられると思います。でももうひとつ大事なのが”自殺をさせないこと”だと思います。
「親と一緒に暮らしている小中高生が自殺しました」というニュースを見るたびに、私はいつも「親は一体何をしていたんだ?」と思うんですね。絶対に助けられる、救えるチャンスはあったと思うんです。もちろん親御さんには途方もない悲しみがあるとは思います。でも例えば学校でいじめがあった時に「いじめの事実を学校は認識していたのか」などと学校や友達を責める前に、私は家庭でできることはあったと思うのです。それをしなかった自分たち親の責任を深く反省すべきです。学校より部活より、まずは家庭でしょう。「いじめを知りながら何もしなかった学校に責任がある」なんて、後で言ってもダメなんです。死なせたらダメなんです。
学校を当てにしてはいけません。まずは家庭での”死なせない”教育です。そして死なせないために、親子関係を強固にしなければ!と思います。
自殺はいけないこと、死ぬことは絶対にダメなこと。ひたすら幼い頃から叩き込みます。 死を美化してはいけません。
立ち向かっていけないと思ったら”逃げればいい”のです。世間体など考えず、転校する、引っ越しをするなどして、逃げる方法はいくらでもあるのです。「いじめの被害者はこっちなのに、何でうちが転校?」なんて意地を張っていては、その間に子供の苦しみが増すだけです。他人を変えるのは難しい。だから自分が変わらないと。そして学校が教えないことは、家で教えればいいのです。”死なない子供に育てる”というのは究極の絶対的な子育てのポリシーだと思います。

 

我が子に教えるべきは”恐ろしさ”

MET: 同感です。私も上の子が小学1年生(当時)で、これから学校で何があるかわからないし、いじめの対象となるかもしれない。私も自分の子育てに自信がないんですね。私もブレるし、昨日言ったことと今日言ったことが一致していないこともある。気分が良いことも悪いこともある。全然完璧ではないし、毎日試行錯誤しながら子供と関わっています。でもそういうロジカルな部分は置いておいて、とりあえず「最後はママが味方だから」と言い聞かせています。

久美子さん:子どもが小さいころは、不慮の事故から守るために子どもの手を引いて歩く。これは確かに鉄則です。だけど、いつもいつも手を引いて、子供が転びそうになった時に手を引き上げていては、一人になった時に転べないですよね、そういう子は。転び方が分からないし、転んだ時に自分で立ち上がれない。そういう意味も含めて、ある程度冒険が必要です。
車がたくさん通っているところに飛び出していったら、どんなことが起きるか。「車に乗っているときに子供がチャイルドシートを嫌がったり窮屈で泣くから降ろしたり、抱っこしたりしています」という声を聞きますが、じゃあチャイルドシートをしないで事故に遭ったらどんなに恐ろしいことになるか。日本の安全教育は、あまり事故の恐ろしさを教えません。その一方で警察は「チャイルドシートをしましょう」と横断幕を掲げています。
私は交通事故や転落などの事故のニュースを、ヒロ(加藤博人君)が2歳になる前から、解説しながら見せていました。例えばチャイルドシートをしないで事故に遭い、車外に放り出されて後続車に轢かれて亡くなるという事故があったとします。私なら「重く悲しいニュースだけど子供に事故の恐さを教える(=チャイルドシートの重要さを教える)絶好のチャンスだ」と思ってヒロにこのニュースを見せます。 「子供には分からないだろう」とか「子供が泣いちゃうから」などと言って子供の機嫌を取るためにやらない。でも実際は、そういう話も子供が2歳くらいになれば、話せば理解するのです。
だから親としてやるべきことは何でもやる。過保護とは違うもので、ある程度恐ろしさを教える。自分で危険かどうかの判断ができるように育てていく方法はあります。やっぱり”恐ろしさ”を教えていくことが第一だと思います。

 

助手席に乗る者は幼児でも”助手”

MET:久美子さんは根気よくヒロくんに語りかけていますが、「もういいや」って投げ出すことはありますか?

久美子さん:うーん、それぞれ親子の関係もありますが、ヒロは割と分かってくれたんですよね。

MET:それはどうやったら分かってもらえるようになるんでしょうか?

久美子さん:例えば我が子ながらすごいなって思ったのが、ヒロが4歳半くらいの頃です。
当時私は、彼を公文の教室に通わせていたのですが、ある時一人で行かせてみたんですよ。まぁ、3歳くらいからコンビニに行かせていたんですが(笑)。コンビニに近い方の横断歩道には信号がなかったけど、遠い方の横断歩道には信号があったんですね。ヒロはその遠い方を渡っていたんです。それにはちょっと感激しました。「信号が無いから危ないね」とか「こっちを渡りなさい」と教えたことは一度もなかったんですよ。いつも一緒に渡る横断歩道を通りすぎるから「あれ、どこ行くんだろう」って思ったら信号でちゃんと待っていた。そういう感覚は常に車で二人で移動していて「ここの横断歩道は事故が多いんだよね」とか「信号がないから事故が多いんだよね」とか「ここは信号無いから危ないんだよね」とか、ヒロを子供だと思わずにとにかくいつも普通に喋っていました。そういう会話の中で、危機意識が身についたのかな、と思います。

MET:子供に「ここは危ないよ」と言うのではなく、ただ会話の中にそのような話題がある感じですね。

久美子さん:そう。言い聞かせているのではなく「今日も事故あったね」みたいなことを普通の会話の中で。そうすると「ああ、ここは事故多いんだ」とか、彼は自分の中で判断していたのです。
ヒロは1歳3〜4ヵ月目で歩き始めたんですけど、ヒロが歩けるようになったら一番にやって貰おうと思っていたことが、駐車券を取ることだったんですね。それは私が左ハンドルの車に乗っていたからです。
当時はまだ、高速道路にETCが普及していなかった頃でした。料金所のおじさんからチケットを貰うくらいは、ヒロは1歳くらいからやっていたんですが、それは手を伸ばせばできることです。でも駐車券って、左ハンドル車の場合、車から降りなければ取れません。だからヒロが立てるようになったら、それをやって貰おうと夢みて仕込んでいたわけです(笑)。そしたら、見事に1歳3ヵ月くらいで取ってくれるようになりました。
その後1歳半になったら、お金も払ってくれるようにもなりました。最初に挑戦したのは1歳半検診の帰り、区役所の駐車場でした。後ろに車が来ないのを見計らって、「ヒロ、ここのオレンジ色のところにお金を入れてね」と言って。
それからもう彼の役割が決まりました(笑)いつも私はヒロに言っていたのです。「助手席と言うのは何のためにあるか知ってる?ドライバーを助けるためにあるんだよ。助手席というのは助手が座る席なんだよ!」って。

MET:もう既に大人扱いですね(笑)

 

”ブーブ”が理解できない

MET:小さいころは、ヒロ君に対して赤ちゃん言葉などは使っていましたか?

久美子さん:いえ、使わなかったですね。

MET: ご著書で印象深かったのが、ヒロくんの1歳半健診の時のエピソードです。

久美子さん:そう、指さしね。保健師さんが言うものを指さす。かわいい大きいイラストを持ってきて、ティッシュとかコップとか、日常的にあるものを見せて「ティッシュはどれかな?」とか「コップはどれかな?」とか聞いて、それを指さすテストだったんですね。うちは男の子だし、当然車は分かると。それで「ブーブはどれかな?」と聞かれたんですね。
「これはまずい!」と。うちはブーブなんて言ってないし!最初からトヨタ・クラウンのアスリートとか(爆笑)。車のイラストはすごくデフォルメされた、子供向けのイラストだったから、車種が分からない。ヒロは車種が分からないものには無反応だったんですよね。車は全部固有名詞で教えていましたから。
それで、保健師さんのボールペンの先が”要観察”の文字に触れて、そこが丸で囲まれそうになったので「ヤバい!」と思って「ヒロヒロ、フロントガラスどれ?ドアミラーどれ?バンパーどれ?ホイールどれ?」と、パーツを小声で伝えたんですね。そしたら即座に指をさしました(笑) でも保健師さんは、「大丈夫ですか?おうちでは大丈夫ですか?」と(笑)家でもブーブなんて分からないけどね。保健師さんはすごく納得してない顔をされてました(笑)

MET:ちょっとヒロ君に聞いてみましょうか。ヒロ君は、友達と話す時も固有名詞を使う?

博人くん:言ってもあんまり分かってくれないんで・・・

MET:天才ゆえの孤独!

 

 続きはPart2にて・・・こちらをクリック!

 

加藤さん関連リンク

● ブログ「クルマ好き”検定親子”は道なき道を走り続けます!」:こちら
●「固有名詞」子育て – ふつうの子でも知らぬまに頭が良くなった55の方法(朝日新聞出版):
詳細はこちらにて!

 

MET People

第1回:さとう桜子さん(がん患者にも優しいエステサロンで起業)
第2回:小松崎友子さん(アジアに日本を売り込むPRプロデューサー)
第3回:羽田賀恵さん (日本に”ローフード”を広める社会起業家)
第4回:ローレン・ファイクスさん(レストラン・レコメンデーションアプリ”Quchy”ファウンダー)

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