世界が認めたスマートシティ@兵庫県加古川市

取材&構成:徳橋功
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兵庫県加古川市では”スマートシティ”の取り組みが行われており、それが世界から大きく評価されています。その実績や成果、市民の声や加古川市の未来像などを伝える「ミニレクチャー会」が2022年9月末にオンラインにて行われました。

スマートシティとは、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の先端技術を用いて、基礎インフラと生活インフラ・サービスを効率的に管理・運営し、環境に配慮しながら、人々の生活の質を高め、継続的な経済発展を目的とした新しい都市のこと(※IoTNEWS参照)。これまで主に欧米諸国や中国、シンガポールで実施され、日本でも大手自動車メーカーによる大規模なスマートシティ構想が話題になりました。

しかし加古川市のスマートシティへの取り組みは、それらの流行や潮流とは関係なく始まったそう。その全体概要を岡田康裕市長が説明し、加古川市政策企画課スマートシティ推進担当課長 多田功氏が各施策の詳細を説明しました。

 

すべては市民の”安心・安全”のため

加古川市は26万人の人々が住む、兵庫県内第6位の規模を誇る街。神戸市や姫路市に通勤する人々が住むベッドタウンであり、重工業が盛んである一方、世界的に有名な和牛ブランド”神戸牛”の生産地の一つとしても知られています。

当市は長らく”治安が良くない”という課題を抱えていました。 盗難やひき逃げ、飲酒運転、痴漢などの刑法犯罪認知件数が周辺都市と比べて多く、人口1,000人当たりにして2017年には兵庫県内でワースト2位にまで悪化。より安全で安心して生活できる環境を市民に提供するため、岡田市長を中心に対策が講じられました。これが加古川市のスマートシティの出発点です。

加古川市は2017年度から2018年度にかけて、小学校の通学路および学校周辺に約1,500台の「見守りカメラ」を設置しました。


※加古川市資料より

「カメラ設置に対して、メディアに勤務する知人から”そんなことして大丈夫か”と不安視された。市側にも漠然とした不安はあった。しかしカメラ設置の先行事例が他自治体ですでにあったため、市民からの賛同を得られるはずだと考えた」と語る岡田市長。”カメラ=監視”と捉えられる懸念を払拭させるため、事前に市民へのアンケートや、市長自ら参加するタウンミーティングを開催し、9割以上の市民からの賛同を得た上で設置を実施。映像データの第三者への提供を、捜査機関の要請があった場合および災害などの緊急事態のみに制限することなどを定めた条例(「加古川市見守りカメラの設置及び運用に関する条例」)を制定しました。

また加古川市は、BLE(Bluetooth Low Energy:低消費電力の通信モード)を用いた”見守りサービス”を子どもやお年寄りに導入。「見守りカメラ」がBLEタグから発信された電波を感知し、その位置情報が家族に届く仕組みを構築しました。また見守りカメラが設置されていない場所をカバーするツールとして”かこがわアプリ”を市民に提供。そのアプリが検知器となり、見守りサービスを利用する家族などに届きます。他に市の公用車や郵便車両にも検知機能を搭載しています。


※加古川市資料より

これらの施策により、刑法犯認知件数は兵庫県平均以下にまで減少し、2021年にはカメラ設置前に比べて半減しました。また警察への情報提供から、事件や事故の早期解決につながる事案が出てきているとのことです。


※加古川市資料より

 

オンラインで突破する市政への壁

市民に安心・安全を届ける一方、より多くの市民の声を集める試みも行われました。それが”加古川市版Decidim”です。2020年10月、・バルセロナ発の市民参加型合意形成プラットフォーム”Decidim”を国内で初めて導入しました。


※加古川市資料より

Decidimでは集まった意見やアイデアに市側からのフィードバックが行えるため、広く公に意見や情報、改善案などを求める”パブリックコメント(パブコメ)”よりも市民との議論を深めることが可能になります。また行政と市民との間だけでなく、市民同士でも意見交換が展開されます。オンラインのDecidimだけでなくオフラインミーティングを組み合わせ、年齢や属性を超えたフラットな議論が行われています。なお加古川市では、Decidimへの参加者のうち10代と20代が全体の4割を占めており、 高校生による地域課題の解決案の検討にも活用されました。また、まちづくりや新施設の愛称決定などに様々な世代の市民が参加してきました。

 

加古川市版スマートシティ 世界へ

これら以外にも行政手続きのオンライン化や窓口業務改革、読売テレビの地上デジタル放送波を利用した災害情報の伝達(※隙間となる帯域を利用して情報を送信するため、本放送に影響なし)などの施策を実施してきた加古川市。「市民の幸福感の向上」を目標に始まり、市民の合意形成をはかりながら、市民と共に進め、市全域での実施に至ったスマートシティへの取り組みが、世界から高い評価を受けました。先進国および新興国から成るG20諸国が結成した”G20 Global Smart Cities Alliance”への参画です。バルセロナやロンドン、トロントなど世界的な大都市が加盟するスマートシティ連合に、石川県加賀市や静岡県浜松市、群馬県前橋市と共に2020年10月に加盟しました。


「見守りカメラ」設置の経緯と効果についてプレゼンテーションを行う岡田市長
英語 ※クリックすると市長のスピーチが再生されます)

今後はさらに市民の安心・安全に寄与するべく、AI活用など見守りカメラの高度化、レンタサイクルなどシェアモビリティの移動手段および見守りタグ検知機能としての活用、笑顔認証による低年齢層のウェルビーングの可視化を推進する計画です。

しかし一方で、高齢者や障がい者の間で「デジタル化が進めば、自分たちは取り残されるのではないか」という不安が拭えないでいるとのこと。その対策として岡田市長は「デジタル格差を埋めながら、電話などアナログによるサービス提供を継続させる」と語りました。

 

国内外から熱い視線が送られるスマートシティ@加古川市。その在り方は、今後の日本の他自治体の手本になっていくことでしょう。

 

関連リンク

加古川市スマートシティ構想を策定しました(加古川市ウェブサイト 2021年9月8日発表):こちら
加古川市 市民参加型合意形成プラットフォーム(Decidim):kakogawa.diycities.jp/

 

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