セバスチャン・ジェリンスキさん(ポーランド)

インタビュー & 構成:徳橋功
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Sebastian Zieliński
鍼灸師/カイロプラクター

 

僕は医者になりたい。人間の健康だけでなく、生きとし生けるもの、自然、そしてこの地球を大切にする医者に。

 

 

ある国から日本に来た人たちに出会いながらも、まだインタビューをしたことが無かった – そんな国がいくつかあります。その1つがポーランドです。漢方薬店と鍼灸院が一つになったユニークなお店“和氣香風”さんを通じ、この国からやって来た素敵な研修生を紹介する機会をいただきました。

セバスチャン・ジェリンスキさん。若くエネルギッシュで熱意あふれる鍼灸師です。セバスチャンさんは、和氣香風の共同代表である山本浩士さんから鍼灸や武術、整体を学ぶためにユーラシア大陸を横断し日本にやって来ました。山本さんは自身の医療の知識や哲学を世界中の人たちに伝えてきました。

今回は、イタリアからやって来た指圧師兼武道家・レナート・リベルティさんに続く、山本さんの愛弟子とのインタビュー第2弾。山本さんはセバスチャンさんが経験を積んだ暁に素晴らしき鍼灸師へと成長し、やがてコラボレーションすることを夢見ています。

*インタビュー@和氣香風(目黒区)
*英語版はもう少しお待ちください。

 

旅は大学 出会った人たちが僕の先生

僕はポーランドの首都ワルシャワから来ました。これまでアジア各国を旅してきました。なぜなら東洋文化に深い魅力を感じるからです

旅や新たな人との出会いは、僕が情熱を注いでいるものであり、僕のひらめきや知恵の源です。旅を通じて僕は人や彼らの文化に対しオープンになりました。僕にとって旅は大学です。そして僕が出会った人たちが教授なのです。

それは韓国に初めて行ったときのこと。韓国は、僕が仏教や太極拳の修行をした場所ですが、それらを通じて人間のことをもっと深く理解したいと思うようになりました。その後、インドに行くチャンスが目の前に現れたのです。

僕はインド北部のラダックという地域にある小児科医院でボランティアをしました。それまでに僕はカイロプラクティックの学校を卒業していましたが、どの分野に進むべきか分からずにいました。

医院に来た子どもたちが大変厳しい状態にあったにも関わらず、僕の施術に効果が表れたり、僕の手で彼らの苦痛が軽減されたり除去されたりしたことを目の当たりにしました。だから僕は“医者”の道を歩むことを決意しました。人々を救うために必要な術をもっと深めたいという欲望をたぎらせていました。

僕は皆さんに、独り旅に出ることを強くお勧めします。なぜなら独り旅は自分自身の本当の姿を見出すチャンスをくれるからです。もし一人で旅をすることや、独り旅の道中での孤独を恐れているのなら、心配ご無用!道すがら出会う人たちは、いつも皆さんを彼らの素敵な仲間に引き合わせてくれます。皆さん自身をじっくり見つめている時だけでなく、人々と一緒にいる時でも、ご自身の本当の姿を見つけることができるのです。

 

偉大な師との出会い

今回が3度目の訪日で、3か月滞在しました。2017年以来、僕は偉大な師から学ぶために毎年日本に来ています。僕は一生学習者でいようと思っています。なぜなら学びには終わりが無いからです。禅僧の鈴木俊隆氏は言います。「初心者の心には多くの可能性があるが、専門家の心には可能性がほとんどない。」

僕はポーランドで武術や整体、カイロプラクティックを学び、やがて自然療法や、自然な方法での人の癒し方に興味を持つようになりました。それが僕が日本に来て、西洋医学とは異なる療法を教えてくれる先生に会おうと決めた理由の一つです。日本に来ることで僕はその療法を編み出した人たちから直接学ぶことができるのです。

しかし僕は、誰に会えば自分の目的を達成できるのか分かりませんでした。だからとにかく運命に身を委ねようと思いました。日本には誰も知っている人がいなかったから、とにかく地元の人たちに聞きまくり、インターネットでも探しました。そうして僕は、何かを学ばせていただけると感じた人たちを見つけ、実際に空手の指導者や鍼灸師、医師、他たくさんの人たちに会いました。彼らは僕に自身の生徒のように接してくれ、彼らの世界の一部として自分が受け入れられたように思いました。

僕はその後、2017年の初来日の時に山本先生に出会いました。まだ先生が自身のクリニックを開く前のことです。インターネットで先生を見つけ、メッセージを送りました。そのすぐ後に先生がポーランドにいらっしゃることになっていましたが、でも僕は先生に会いに日本に行こうと決めました。

先生は故郷の兵庫県西宮市に僕を連れて行ってくれました。先生のお母様が、ご自身の経営するカフェでとても美味しいベジタリアン料理を振る舞ってくれました。また先生は気功や武術を教えてくれました。僕は先生に学ぶ機会をいただけたことに深く感謝しています。


師匠である山本浩士さん(左)からのアドバイスに真剣に耳を傾けるセバスチャンさん

先生は僕に、東洋医学療法の基礎を教えてくれ、とても興味を持ちました。それについて真剣に深堀りしていきたいと思った僕は、鍼灸を学び始めました。山本先生は僕に、ポーランドの鍼灸師であるオスカー・オルシェウスキさんを紹介してくれました。僕は日本から帰国後、すぐに彼のクリニックで仕事をさせていただきました。オスカーさんと仕事をし、彼から学ぶというチャンスを得られたことは、僕のこれまでの経験の中で最も貴重でやり甲斐のあるものとなりました。オスカーさんには絶えることない感謝の気持ちでいっぱいです。さらに僕は鍼灸を、京都の鍼灸師兼栄養学講師である杉原次郎先生や、韓国にいる先生からも学びました。彼らが僕に、療法に対するさらに深い洞察力を与えてくれました。

僕は漢方薬にも興味があり、実際に数年間学んでいます。山本先生の奥様である小林香里さんや、長野県安曇野市の漢方薬局“芍薬堂”を営む土屋芙紗子さんから学びました。来年(2020年)は台湾でさらに学ぶ予定です。

 

厳しい生活があってこそ

僕はイタリアのトスカーナ地方で育ちました。12年間そこに住んだ後、僕は父の住むポーランドに移りました。当時、僕はカンフーとテコンドーのトレーニングを受けていて、そのおかげで肉体的にも精神的にも強くなりました。僕がカンフーを習い始めたのは13歳の頃です。その頃僕はブルース・リーやジャン・クロード・バンダムの映画をテレビで見ていました。空手やボクシングなど、他の格闘技もやってみたものの、結局残ったのはカンフーでした。なぜなら僕の先生は精神的に僕を支えてくれた、父のような存在だったからです。僕の実の父は僕が情熱を持って取り組んでいたことに対して、先生と同じようには感じてくれなかった。だから僕はこっそりと練習していたのです。

やがて僕は、父の面倒を見ることになりました。でもその経験を通じて、僕は身体がどのように機能するのか、体がどのように動くか、そして人間の身体のシステムに興味を持つようになりました。僕は高校卒業後、カイロプラクティックを学び始め、そしてアジア諸国を中心に、より幅広い療法を見つける旅に出るようになりました。旅を通じ、生きることに対してもっと意識的になるようになるよう人々に促していくことが、自分の目的であるように思いました。

 

僕らの人生、子ども、地球を大切にしよう

日本を発った後、僕は自分がワルシャワに新たにオープンするクリニックで仕事を始めます。その前の2019年6月に“ハート・トゥ・ハート(心と心)・ファンデーション”という基金をポーランドで立ち上げました。基金の目的は、西洋と東洋の療法を組み合わせることです。

僕たちが重視するのは3点です。第1は自閉症といった精神的な病やダウン症、また文明病と言われるような肥満や糖尿病など様々な病気を患う子どもたちの治療です。第2は自らの健康への配慮の仕方や、僕たち人間もその一部であるエコシステムへの敬意を持っていかに意識的に生きていくかを人々に教えていくこと。最後の3つ目は、あまねく人たちに栄養や医学について教えることです。また僕たちは若い人たちを主な対象に据えようと考えています。なぜなら彼らが僕たちと共通の未来を作っていく人たちだからです。

良き医者になること、この地球を大事にしていこうとする人たちと共に仕事をすること – それが僕の夢です。


修業を終えて山本先生と

 

セバスチャンさんにとって、東京って何ですか?

新たな発見を可能にする素晴らしい場所です。

僕にとっては、どの場所もまるで“金鉱”。皆さんがやるべきことは、時間をかけてそれを実感することです。落ち着いてお茶をいただきながらカフェを通り過ぎる人たちを眺める。公園のベンチに腰かける。ラーメン屋さんで他のお客さんを見る – そんな時、様々な場所が金鉱であることを感じていただけることでしょう。

ある美容師さんが自分の物語を僕たちに話し、それが他の人たちから聞いた話と織り重なっていく。初めて出会う言葉、初めて出会ってから間もない友人 – それらを通じて日々、人生の新たな章が始まります。その出会いは一瞬で終わるものになるかもしれないし、生涯にわたるものになるかもしれません。そしてすぐに、一見すると暗く無意味な場所が、宇宙全体を映し出す鏡や人生の窓となるのです。東京は僕に“一期一会”という言葉を思い出させてくれます。この街で皆さんは、一瞬を永遠に変えることができるのです。

東京で僕はとても素晴らしい時間を過ごすことができました。それは日本だけでなく海外から来た人たちにもたくさん出会えたからです。僕は彼らに自分のストーリーや知識、気持ち、感情を伝え、それが僕にとって大いなる学びとなったのです。

僕は自然が好き。でも都会も好き。まさに陰陽ですね。

 

セバスチャンさん関連リンク

Akupunktura Sebastian Zieliński (Facebook): facebook.com/AkupunkturaSebastian/

 

My Eyes Tokyo

Interviews with international people featured on our radio show on ChuoFM 84.0 & website. Useful information for everyday life in Tokyo. 外国人にとって役立つ情報の提供&外国人とのインタビュー